2017 Fiscal Year Research-status Report
蝦夷地のアイヌ有力者が入手した外来交易品と勘定システムの成立に関する研究
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16K03007
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
東 俊佑 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30370224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 交流史 / 北海道史 / アイヌ / 蝦夷地 / 場所請負制 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、以下の4つの項目について、研究とそれに係る作業・調査を行い、成果を公表した。 1.前年度に引き続き、北海道大学附属図書館所蔵のアイヌ交易帳簿『北蝦夷地用』の翻刻を進めながら、稼ぎ高や貸付高の額、貸付品や支給品等の種類・数量・値段等のデータのExcel(表計算ソフト)への入力作業を進めた。しかしながら、いざ入力を進めると、数量が膨大であったため、帳簿前半部分にあたる人別帳、及び1859年の「土人給料勘定」部分で成果をとりまとめるととし、分析した結果を『北海道博物館研究紀要』第3号に寄稿し、研究成果を公表した。 2.ロシア連邦サンクトペテルブルクの東洋古籍文献研究所が所蔵するアイヌの交易帳簿『簾貸帳』と『大福帳』の分析をすすめるにあたって、帳簿がロシア側に接収されるきっかけとなった1806~07年のフヴォストフ事件に関する史料調査を行った。具体的には、京都大学吉田南図書館、及び前田育徳会において、本木謙助関係資料の調査を行い、マイクロ複写にて関係資料の収集を図った。 3.前年度の研究成果として公表した論文「安永7年の蝦夷地奉行定書について」の成果普及として、北海道・東北史研究会例会2017において、研究発表を行った。 4.本研究対象である帳簿『土人勘定差引帳』の関係資料調査として、石川県金沢市のフラーシェム・N・良子氏所蔵の場所請負関係文書の調査を行い、関係資料を収集した。収集した古文書は、勤務先の所蔵資料とし、資料のクリーニング、保存処理、中性紙封筒整理作業を行い、必要な情報の目録取り作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
帳簿のデータ入力作業は若干滞っているが、帳簿を分析するための歴史的背景の調査や研究は順調に進展している。『北蝦夷地用』のデータ分析は、前半のみ完了し、成果を年度末に公表した。後半部分は平成30年度にデータ入力、分析、及び成果公表を予定している。また、帳簿の歴史的背景に関する研究では、新たな史料、史料群を調査・収集することができ、当初の想定以上の史料を手元に集めることができた。集めた史料の分析は平成30~32年度で実施することが可能と判断している。以上から、自己点検の結果「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.『北蝦夷地用』の記載情報のExcelへのデータ入力作業を完了させ、帳簿後半部分の分析結果を論稿「『土人給料勘定』のしくみ(Ⅱ)」として取りまとめることを課題に設定する。執筆にあたっては、図表でわかりやすく提示する工夫をし、また帳簿全体の写真と翻刻文も掲載することで、研究成果の普及と共有に努めることとする。また、平成29年度に公表した成果「『土人給料勘定』のしくみ(Ⅰ)」について、北海道・東北史研究会例会2018、及び関係する研究会・フォーラム等にて研究発表を行い、情報の共有化と普及に努める。 2.『北蝦夷地用』の分析がおわり次第、北海道博物館所蔵のアイヌ交易帳簿『土人勘定差引帳』(林家文書)の記載情報のExcelへのデータ入力作業を開始することとする。また、平成29年度に収集したフラーシェム家文書(場所請負関係文書)について、整理作業と分析を進める。整理の終わった史料については、適宜勤務先の北海道博物館にて古文書の展示を行い、成果の普及に努める。また、資料群全体の目録作成のための情報分析と写真撮影を適宜進める。 3.その他、蝦夷地のアイヌ有力者が入手した外来交易品についての状況を把握するため、関係する古文書やアイヌ風俗画についての調査を同時並行的に進めることとする。時間に余裕があれば、平成29年度に収集した本木謙助関係資料(フヴォストフ事件に関する記述のある史料「秘帳坎々奇話」ほか)の史料紹介に向けた翻刻作業をはじめることとする。
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Causes of Carryover |
計画的に予算を執行したが、6円の残額が出てしまった。6円に相当する物品、旅費、謝金、その他経費を執行することは、きわめて困難である。また、わずか6円の繰り越しは、次年度の研究計画に重大な影響を及ぼすものではないと判断されることから、やむなく6円の残額を次年度に繰り越すこととした。
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Research Products
(3 results)