2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ainu Salary Accounting System and trade goods obtained by the Ainu chieftains.
Project/Area Number |
16K03007
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
東 俊佑 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30370224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蝦夷地 / アイヌ / 近世 / 江戸時代 / サハリン / 場所請負制 / 軽物 / 狩猟 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、以下の3つの項目について、研究とそれ係る作業・調査を行い、成果を公表した。 1.前年度に引き続き、北海道大学附属図書館所蔵のウショロ場所経営帳簿『北蝦夷地用』の翻刻を進め、帳簿最末尾の数丁に記載の「軽物納」に関する分析を進めた。 2.ウショロ場所の軽物上納の事例をさらに掘り下げて解釈するために、蝦夷地の軽物に関する史料の調査と分析を進めた。具体的には、(1)『蝦夷地一件』や『休明光記附録』などの幕府の公文書類、平秩東作『東遊記』、松前平角『蝦夷唐太嶋之記』、最上徳内『蝦夷草紙別録』などからアイヌの軽物上納の諸相を探り、(2)北海道博物館所蔵の林家資料や村山家資料、玉虫左太夫『入北記』、『幕末外国関係文書』などから、軽物の種類・値段の諸相を探り、(3)「箱館奉行所文書」や林家資料『御軽物割合写し書』などから、軽物上納のしくみとノルマについて考察した。 3.前記1.2.を踏まえ、研究成果を「北蝦夷地ウショロ場所におけるアイヌの軽物上納」(『北海道博物館研究紀要』第6号、2021年3月)として取りまとめ、公表した。また、この論考は、2017-19年の3年間に本研究の成果として公表した3つの論考「『土人給料勘定』のしくみ(Ⅰ)~(Ⅲ)」のまとめとしての意味を持つ。すなわち、帳簿『北蝦夷地用』には、ウショロ場所のアイヌを統治するための「給料勘定」、「撫育」、「軽物納」の3つのしくみが具体的に掲載されており、それは現代における雇用、扶助(社会保障)、納税の3つの要素に近いものと考えられることを指摘した。本研究の当初の目的に照らし合わせれば、アイヌ有力者が入手した漆器、絹・木綿などの高額な外来交易品は、勘定システム=「給料勘定」により入手可能であったことを具体的に示した。概念的な分析ではなく、帳簿の数字・記載内容を表にして、明朗に示した点が本研究の特色である。
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Research Products
(1 results)