2018 Fiscal Year Research-status Report
内戦期華北地域社会における中国共産党の支配権確立過程:伝統社会からの転換
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16K03088
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
荒武 達朗 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (60314829)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 中国共産党 / 国共内戦 / 地主 / 中国革命 / 山東省 / 土地改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は中国華北、特に山東省南部を対象として伝統社会から中国共産党の統治下に到る社会変容を考察する。昨年度は日中戦争末期から内戦期にかけての当該地域の変動を詳細に追うことができた。本年度はその補充調査を行うと共に、収集した資料を基にしてその前提となる伝統社会に対する考察を深めた。これまでの作業により大店荘氏などの宗族が中国共産党の統治下で弾圧を受け解体されていく様相が明らかとなった。その際、彼らの「数百年にわたる封建統治」が批判の根拠となったが、その内実はどうであったか。まず対象となる地域の場合、伝説では明初の14世紀の移住が多いが、それはおそらく後に形成されたものであり、宗族の形勢は17世紀の清代になってからのことである。18世紀以降の有力宗族の浮き沈みは激しい。19世紀初頭の嘉慶年間に有力宗族であった戦氏はやがて没落し、王氏や管氏そして荘氏がそれに取って代わるようになる。なかでも荘氏は民国期に至る大宗族として認知されるようになった。それ故に共産党政権によって典型的封建地主として攻撃を受けたと言える。 ではその荘氏の内部は如何なる結合様態が見られたか。本年度の作業により17世紀から18世紀にかけての宗族内部の対立が明らかとなった。一般に宗族は同一世代においては輩行字という共通の字を名前に含む事で一体感を増すが、この時期の大店荘氏は狭い範囲でしか輩行字を共有していない。そこには宗族とはいえ、小家族のゆるやかな集合体が実情であることが判明する。また『軍機処トウ案』の中に、19世紀半ば道光年間の荘氏の有力族人による財産争いに関する資料を偶然に発見した。この段階においてはある個別家族が数千畝にいたる広大な土地を所有していたことが明らかとなる。そしてこの頃に輩行字の統一、族人の結集などの作業が始まることが推定され、同世紀中葉の動乱を経て大宗族へと成長したのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は特に伝統社会に重点をおいて研究を進め、項目5で述べた内容に関する論文を現在執筆中である。また当該時期の山東半島社会に関する論考を発表することで本研究課題を側面より補強することができた。予定とされている伝統社会、日中戦争期、内戦期それぞれにかかわる材料は整いつつあるので、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は主として清代後期の山東省南部の伝統社会に関する考察に着手した。今年度の早い段階で台湾での文献調査、ならびに山東省南部での調査を実施し、日中戦争期から内戦期の当地に関わる資料を収集する。併せてこれまで収集した文献を中心に伝統社会内部での社会関係に関わる考察を深め、最終的に伝統社会より内戦期を経て中華人民共和国にいたる社会の変遷についての議論を行うこととする。
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Causes of Carryover |
名古屋・東京・奈良での資料調査が年度末になり予定よりも低額ですんだこと、ならびに中国大陸での調査を2019年度に実施することとしたため。
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