2018 Fiscal Year Research-status Report
北米大陸史枠組み構築のための1812年戦争研究:双方向的把握の試み
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16K03107
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋川 健竜 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30361405)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 1812年戦争 / カナダ / 北米大陸 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は勤務先より研究専念期間をいただき、本研究で用いる一次資料と研究文献を、インターネットや海外出張の機会を利用して集中的に集め、読解する作業を行った。具体的には、アメリカとイギリスがカナダほかで交戦した1812年戦争についての、軍事・政治指導者の書簡類(書籍媒体に編集されたもの)、また当時の新聞記事や、戦争の現場に居合わせた民間人の手記、戦争終結直後にアメリカとカナダで複数刊行された一群の戦争史などである。 その過程で、戦争前にアメリカからカナダに移住し、アッパーカナダ植民地をアメリカ人に紹介する地理書を準備していたものの、開戦を受けてアメリカに引き揚げ、アメリカで加筆を行ってその書籍を刊行したという、きわめて個性的な事例に行き当たった。戦争前と戦争中では、書籍の読者としてどういう立場のアメリカ人を想定するかに、深刻な変化が生じていたはずである。各章の記述を見ると、その点の混乱を確認できる。しかもこの著者マイケル・スミスは、戦争中から終戦後にかけて、その書籍を計5回も改訂して刊行し続けていた。 この興味深い、個性的な事例(同じような境遇の人々の史料はきわめて少なく、集合的に議論するのは困難である)について、書籍の内容と改訂のあり方を検討する事例研究を試みることとした。年度内に行った計3回の海外出張では、現地でしか閲覧できない一部の改訂版書籍と、手稿資料とを確認した。それを踏まえて研究ノートを執筆し、勤務先の研究紀要に、「元後期ロイヤリストがアメリカで描くアッパーカナダ植民地と1812年戦争(1)」として発表した。この研究ノートは研究の前半部分にあたる。後半部分については、同じ研究紀要に、2019年度末に発表する予定で準備を進めている。その内容について、初期アメリカ学会の研究会で発表も行った(2019年4月13日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を前に進めるために必須となる、かなりの量の基礎資料群を、インターネット上から入手することができた。それに加えて、事例研究を行うに十分な量の個性的な史料群を見つけることができた。インターネットでの調査では判然としない部分についても、現地調査によって確認することができた。 それらを踏まえて研究ノートの執筆を行い、発表することができた。また、研究ノート続編の構想を練るための準備作業として口頭発表を計画し、その用意も2018年度内に行うことができた(2019年4月13日に報告した)。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年度に当たるので、前年度に執筆した研究ノートの後編を執筆し、本研究の一環としての事例研究に一つの区切りをつけたい。それを目的とした海外出張を、夏季休暇中に行いたい。加えて、まだ入手していないカナダ史の重要文献を、1812年戦争の前後を含めて入手する作業を行いたい。 可能であれば、これらの作業を通じて、個別の事例研究を超えたレベルの論考を構想する作業も手がけたい。1812年戦争をアメリカ・カナダ両方向から検討することの北米史的な意義について、研究動向を総括する論考を構想する作業である。
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Causes of Carryover |
2018年度は国内出張1回と、海外出張3回を行って、2017年度に執行せず残した研究費を含め、多くの助成金を執行した。それでも若干、未執行に終わった額があるが、2万円強と、比較的小規模である。これは、2019年度の海外出張と史料の購入の一部にあてる予定である。
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Research Products
(2 results)