2017 Fiscal Year Research-status Report
近代イギリスにおける動物福祉の歴史的生成-実践・制度・理念の総合的研究
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16K03108
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
伊東 剛史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (10611080)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / イギリス史 / 文化史 / 社会史 / 動物福祉 / 動物倫理 / 動物観 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代イギリスの動物福祉に関する報告者のこれまでの研究成果に立脚し、動物福祉の歴史的変容を総合的に捉える視座の構築を目指すものである。そのために、新たな史料群の発見・分析を通じて、動物福祉の実践、理念、制度という3つの視角からこの研究課題にアプローチする。2年目にあたる2017年度は、当初の計画どおり研究を進めるとともに、前年に得られた成果に対する諸方面からのフィードバックを活かし、本研究プロジェクトの広がりと意義を確認した。具体的には、昨年度末に公刊した共編著『痛みと感情のイギリス史』の3回の合評会を通じ、今後の研究の方向性について重要な示唆が得られた。そのひとつは、イギリスの動物福祉の歴史の大きな転換点となる、1876年の動物虐待防止法(動物実験規制法)の成立過程およびその社会的影響を、関係者の書簡等の新史料から再検討したものである。研究全体の成果は、本プロジェクト終了後に公刊予定の学術書(単著)として発表する予定であり、今年度は全体の構想を練り、一部原稿の執筆を開始した。以上が今年度の主要な研究成果である。関連する派生的な成果としては、19世紀イギリスにおける動物学会の発展と動物学の制度化との関連を議論した①論文「19世紀のロンドン動物学会からみた動物学の制度化」、②生命科学以外の自然科学の制度化をグローバル視点から考察する試論「犬吠埼灯台から考える「科学のリロケーション」」、および③現代日本の「人と動物の関係史」を旭山動物園を事例に、英米との比較の視点から議論した③'Flying Penguins in Japan's Northernmost Zoo'が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末に発表した研究成果に対して諸方面から大きなフィードバックが得られ、それをもとに、本プロジェクトの主要研究課題とその周辺課題の双方において、史資料調査を進め成果を得ることができた。動物福祉の歴史的変容を考察する際に重要な、①諸科学分野の制度化と、②動物園という同時代人の動物観に大きな影響を及ぼす制度/施設について、それらをイギリス史の文脈においてだけでなく、比較史やグローバル史の視点から検討することができたことは有意義だった。本プロジェクト最終年度の2018年度において、研究をさらに発展させる基盤を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2018年度は、19世紀から20世紀初頭のイギリスの動物福祉の変化を包括的に捉え、とりわけ、動物福祉の理念、実践、制度の相互関係に着目し、その相互関係の歴史的変容を解明することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況に対応して、本年度に予定していた史料調査を次年度に行うことにしたため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(9 results)