2017 Fiscal Year Research-status Report
20世紀初頭のロシアにおける国内移住と入植事業に関する研究
Project/Area Number |
16K03109
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 教授 (10313579)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 国内移住 / 帝政ロシア / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の概要は、20世紀最初の20年間を中心に、アジアロシア移住・入植事業を帝政ロシア政府が描いていた国家構想の一部として位置づけるとともに、1917年ロシア革命前後の連続性と断絶という視点から、農民の国内移住の実態について分析するものである。2年目にあたる平成29年度は、前年度と同様に約2週間の外国出張を実施し、ロシア国立歴史文書館およびロシア国立図書館(ともにロシア連邦サンクトペテルブルク市)を中心に、資料収集を行った。 1914年夏に勃発する第一次世界大戦は、それまで概ね順調に展開してきた国内移住・入植事業にも深刻な打撃を与えた。新規移住者への支援は開戦と同時に中断を余儀なくされ、移住・入植事業に充てられる予算も大幅に削減された。入植地の土地測量などを行う専門職員も動員されて著しい人手不足に陥り、それまで着実に進められてきた土地整理事業も深刻な影響を受けた。入植事業を管轄する土地整理農業総局の業務には、新たに食糧供給、避難民の定住などの後方任務も加わった。このように移住・入植事業もそれを管轄する土地整理農業総局も戦時体制に巻き込まれる一方で、入植者への支援や移住関連法の整備といった「通常の」仕事も引き続き行われていた。第一次世界大戦という未曾有の非常事態においても、移住・入植事業には「平時」の要素が、細々とではあるが、継続していたのである。このような、いわば「戦時における日常性」に注目しながら研究を進め、資料収集を継続的に行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1914年の第一次世界大戦勃発から1917年2月革命直後までの移住・入植事業に関する資料収集は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も現地文書館・図書館での資料収集活動を継続するとともに、統計資料のデータ分析を重ねながら、(1)20世紀初頭のロシア帝国国家構想の一部として移住・入植政策を位置づけて考える、(2)ロシア革命後の1920年代まで範囲を拡大して帝政ロシアの国内移住の実態を捉え直す、(3)第一次世界大戦およびロシア革命前後の連続性と断絶という視点から農民の国内移住の実態について分析する、という課題に順次取り組み、論考として発表していく。
|
Causes of Carryover |
(理由)外国出張の日数が当初計画より短縮されたため、旅費の支出が抑えられた。 (使用計画)外国出張旅費に加え、当初計画では初年度に購入予定だった『ソ連中央統計局報告集』(約41万円)の購入に、翌年度分と合算して使用する計画である。
|