2018 Fiscal Year Annual Research Report
Research studies around the supply of food to the Middle Ages city: relationships between convents and fishmonger-butcher families
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16K03125
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
舟橋 倫子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師(非常勤) (70407154)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 修道院 / 食料供給 / 中世 / ブリュッセル |
Outline of Annual Research Achievements |
砲撃によって失われた都市史料の欠損のため、中世都市ブリュッセル研究においては社会集団の機能とネットワークの実態解明が遅れている。都市周辺に所在するグランビガール、フォレ、ラカンブル女子修道院の旧文書庫所蔵の多数の未刊行文書は都市住民に関する多くの情報を含んでいるにもかかわらずほぼ手つかずの状態にあった。本研究においては、肉・魚業者家系とこれらの修道院の関係にターゲットを絞って3つの女子修道院の13世紀前半までの未刊行史料分析を行った。その結果、都市新興エリート家系と修道院との緊密な連携が都市ブリュッセルへの食糧供給を支えていたことを明らかにした。 都市ブリュッセルは12世紀後半から13世紀初めにかけて急激な都市的発展と人口増加に見舞われ、食料供給の確保は都市領主ブラバン公の急務となった。修道院文書の分析からは、まずはブラバン公の政策が明らかとなった。ブラバン公は都市周辺に設置した女子修道院に水利施設を中心とする低湿地の開発と未耕地における周辺在地有力者との権利関係の調整を委託した。同時に、新たな都市経済活動の担い手である新興都市エリート層に土地の用益権を付与することによってその多面的な活動を促進していった。さらに修道院と家系は土地の開発と利用において共同で作業を進めていったことも明らかとなった。 加えて、関係文書の分析から、肉・魚業者として台頭してくる家系が婚姻関係と修道院との多面的な関係(寄進・入会・死者供養)の集積によって集団として立ち上がってくる様相を跡付けることができた。以上から、ブリュッセルでは新興家系と修道院とが周辺社会状況に応じた動態的な諸関係を構築したこと、そしてその重要な要素として女子修道院に特有の柔軟性が大きく作用したことを明らかとした。
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Research Products
(4 results)