2018 Fiscal Year Research-status Report
地中海におけるフェニキア・カルタゴ文化の発展と変容
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16K03131
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (80459940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人の移動 / ネットワーク / 文化変容 / 文化接触 / アイデンティティ / 古代地中海世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は2件の学会発表(うち一つは国際学会)と1件の公開報告会を行った。以下、簡潔にその概要を述べる。まず7月には第25回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会において、これまでの海外調査の成果の一端として、特に地中海周辺におけるフェニキア・カルタゴ関連遺跡に関する総括的な発表を行った。10月には、スペイン・メリダで開催された第9回フェニキア・カルタゴ国際学会に参加し、国内の学会等でこれまで発表してきた女神の宗教的変容に関する問題をさらに発展させて発表した。なお、学会終了後、研究協力者である宮嵜麻子氏(東洋大学)とともに、10月27日から11月4日にかけてスペイン南西部(アンダルシア・エストレマドゥーラ地方)およびポルトガル・アルガルヴェ地方を中心に、フェニキア・カルタゴ・ローマ期にわたる遺跡の現地調査および博物館資料の実地調査を行った。年度末の3月には、昨年度に引き続き、フェニキア・カルタゴ研究会第5回公開報告会を開催した。今回は、5月に予定されている第69回日本西洋史学会大会での小シンポジウムの準備も兼ねて行った。「古代地中海世界における人々の移動とネットワーク」と題して、長谷川岳男氏(鎌倉女子大学)、宮嵜麻子氏(東洋大学)、青木真兵氏(神戸山手大学)、師尾晶子氏(千葉商科大学)らとともに、自身は、フェニキア人の海外発展にともなうアイデンティティとネットワークの変容という観点から報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年10月以来5年ぶりに開催された第9回フェニキア・カルタゴ国際学会で、自身も発表し、また海外の研究者の発表から最新の考古学の成果も含めて研究に関する貴重な情報を得ることができた。学会後のスペインおよびポルトガル沿岸部の調査で、これまで日本では先行研究のない現地状況の確認をできたことは非常に有益であった。これらをきっかけとして、海外の研究者との交流やネットワークの構築がよりスムーズに行えるようになってきたことを実感する。さらに、フェニキア・カルタゴのみらず地中海全域をカヴァーした人の移動にともなう文化変容に関して、年度末の報告会で2019年5月のシンポジウムの開催につなげる準備ができたことも大きな収穫である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、国内での数件の学会発表と年度末の研究会の公開報告会を予定している。昨年度企画した研究雑誌『フェニキア・カルタゴと古代地中海世界』は、これまでの公開報告会での発表をまとめたものになる。他の発表者の論考も含めて広く研究成果の一部として公表すべく、最終年度内の発刊を目指したい。
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Causes of Carryover |
学会や研究会にかかわる交通費等の支出が予定額より少なく収まった結果であるが、今年度は最終年度であるため、昨年より頻回に研究会の例会等を開催する予定である。差額分はその折の経費等に充当したい。
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