2017 Fiscal Year Research-status Report
中世南フランス都市における処罰する権力の展開と文書利用
| Project/Area Number |
16K03144
|
|---|
| Research Institution | Kindai University |
|---|
Principal Investigator |
図師 宣忠 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (60515352)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
| Keywords | 南フランス / 中世 / 都市 / 異端審問 / 文書利用 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、13世紀後半から14世紀前半にかけての南フランスにおける異端審問に焦点を合わせて、①R. I. Mooreの『迫害社会の形成』以降、近年に至るまでの〈カタリ派〉をめぐる論争を追う形で研究動向の整理を行ない、②審問記録の作成・保存・利用という観点から関連史料を分析するという二点を軸に研究を進めた。
①まず、異端研究および異端審問研究については、近年、フランスのみならずイギリス、アメリカ合衆国、オーストラリアなど英米圏においても研究文献が続々と刊行されており、とりわけ異端〈カタリ派〉理解に関しては、現在進行形で激しい論争が繰り広げられている。前年度に引き続きそれらの研究動向の把握・整理に努めた。J. H. ArnoldとP. Billerが指摘するように、異端が残したテクストや異端反駁書などこれまで注目されてきた異端の教義に迫る史料のみならず、教皇令や教会会議決議、異端審問マニュアル、異端審問記録といった異端関連の史料を総合的に利用することで、異端抑圧の実態に実践的・法的な側面から迫るというアプローチは、とりわけ本研究にとっても重要な研究手法として注目される。
②次に、審問記録の調査としては、冬に渡英してThe British Libraryにて異端審問官ベルナール・ギーによる『トゥールーズ判決集』のマニュスクリプト（Add. MS 4697）を検討した。とくに異端審問官が異端情報の検索のツールとして判決記録を作成・利用していたことを、索引における地名のアルファベット順の配列や都市別に分類されフォリオ番号が付された被告のリスト、欄外の書き込みなどから読み解いた。
これらの研究動向および渡英の調査結果については、年度末に日仏歴史学会第7回研究大会（明治大学）にてその成果を報告した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異端研究や異端審問研究に関する研究文献の刊行が相次いでおり、今年度の研究はその内容把握に多くの時間を要することとなったが、その分これらの研究動向を整理して新たに論文にまとめることにしたため、それによって本研究の位置づけをよりはっきりさせることができるであろう。もう一方の課題である都市裁判に関する調査は当初の計画より若干の遅れが出ているが、研究計画の大幅な変更は必要ないと考える。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後も継続的に異端審問に関わる文書利用の実態の解明に力を注ぐとともに、トゥールーズ市文書館の都市裁判記録（Archives municipales de Toulouse, FF57-60）について調査・分析を進める。以上を踏まえて、13・14世紀南フランス都市における聖俗の裁判記録の利用のあり方に関する研究の成果を総括する。
|
