2018 Fiscal Year Annual Research Report
Written Records and Power in Medieval Languedoc
Project/Area Number |
16K03144
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
図師 宣忠 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (60515352)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 南フランス / 中世 / 都市 / 異端審問 / 文書利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中世南フランス都市における権力による文書利用のあり方を裁判記録の検討を通じて明らかにすることである。最終年度の今年度は、異端審問官が「カタリ派」などの異端者を把捉するためにどのように記録を作成・保管・利用していたか、その実態を明らかにすべく「異端審問マニュアル」と「審問記録」との対応関係の照合を行った。その結果、異端審問の実務にしたがって作成された審問記録が書式例として異端審問マニュアルに掲載され、そのマニュアルの書式にしたがって次の審問記録が作成されるというサイクルが浮かび上がってきた。異端審問官は、徹底的な聞き取り調査を実施してその情報を記録に取らせ、尋問と投獄を繰り返して被告から証言を引き出し、蓄積した過去の記録を活用してターゲットとなる異端者のデータを整理するなど、さまざまな手法を駆使し、近隣諸地域の異端者とその協力者を次々と発見し、起訴し、刑罰を科していった。今回の分析を通じて、異端審問による文書利用を通じた異端迫害の様相を示すことができたと思われる。この成果は近いうちに刊行予定の論集に収録される予定である。 また三年間の本研究の成果を一般に向けて発信する一環として、三冊の概説書で章・項目の執筆を担当した(①R・I・ムーアの『迫害社会の形成』について、②異端〈カタリ派〉をめぐる近年の論争について、③中世フランス史についての概説)。これらのいずれにも本研究で得られた知見の一部が盛り込まれている。
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