2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03146
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中谷 功治 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217749)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 印章 / イコノクラスム / テマ / エパルコイ / ディオイケタイ / プロトノタリオス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した中期ビザンツ帝国における地方行政制度の再編過程についての考察を継続した。具体的にはJ・ホルドンとL・ブルベイカーの共著『イコノクラスム時代のビザンツ 680-850年の歴史』(2011年)で検討されている,当該時期の財務を中心とする地方行政制度の成立事情について,主要な史料である印章史料に照らし合わせつつ考察を行った。主に対象とした官職ないし称号は,昨年度に検討した通商業務に関係するコンメルキアリオイに加えて,6世紀から継続して史料中に登場するエパルコイやディオイケタイであり,この時期に彼らが実際に果たした職務内容の変化について,その管轄した地域との関連からどこまで明らかにできるのか探った。さらに,800年前後に史料においてその存在が確定する行政区画テマに関連して,新たに登場する行政官のプロトノタリオスやクリテスについても,上記の官職・称号保持者との関係から,その成立時期を明確にできないか考察を進めた。記述史料からの情報が欠落している7・8世紀において,活用できるのは印章史料となり,その主要な史料集成は,G・ザコスとA・ヴェグレリ,N・イコノミデス,W・ザイプトらによるものとなる。以上の目的をより効率的に進めるため,夏季にアメリカ合衆国のダンバートン・オークス研究所における集中的な調査を実施した。 以上と並行して,該当する時代の政治情勢をより明確に把握するため,ビザンツ帝国における「イコノクラスムの時代」についての通説を再検討し,「イコンの教会―ギリシア正教会とイコノクラスム」(指昭博・塚本栄美子編『キリスト教会の社会史 時代と地域による変奏』(彩流社,2017年)として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個人的な理由(両親の介護関係)に加えて,同時代のビザンツ領のクリミア(ケルソン市)の統治に関連して,新興勢力であるキエフ・ルーシ(ロシア)との関係について考察を進めることになり(本年3月に金沢で開催された日本ビザンツ学会第16回大会のシンポジウムで報告した),首都コンスタンティノープルを含め,主たる考察対象である小アジア以外の地域の情勢についても研究を広げたため。
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Strategy for Future Research Activity |
未完了である印章史料を活用した地方行政制度の成立過程についての考察を継続・完了させるとともに,800年頃から9世紀中頃までの時期に集中する,小アジアやバルカン南部における新たなテマの成立について,その時期を明確化させるための研究を実施したい。
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