2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03161
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
芝田 幸一郎 法政大学, 経済学部, 准教授 (50571436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 元太郎 大阪観光大学, 国際交流学部, 講師 (30560586)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アンデス / 考古学 / 古代文明学 / ペルー / 後背地 / ドローン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、遺跡踏査とドローンによる空撮および三次元測量を組み合わせることによって、アンデス形成期における後背地研究の進展を図るものである。申請時における2016年度(初年度)の調査計画は、1)ペルーの調査地視察、2)文献研究、3)ドローン操作技術習得の三本柱であった。これに基づき、7月に研究分担者と共にドローン操作を実習し、8月にペルー渡航、そして随時文献研究を行うことになった。 ペルー渡航は8月上旬で、アンカシュ州海岸地方にて予備的な短期フィールドワークを行った。同州ネペーニャ市近郊の調査エリアを視察し、対象遺跡一帯にてドローンによる空撮および三次元測量を試行した。この季節における調査エリア上空の風は安定しており、ドローンの飛行には問題がないことが確認された。また、Google Earthやペルー空軍による航空写真などでは解像度不足で捉えられない小規模遺跡の壁線等も、短時間の広域撮影で検知・記録できることが確認された。こうして得られた遺跡の建築プランを、踏査時に得られる地表の土器片情報と組み合わせることで、効果的に各遺跡の時期や性格を推定することができた。今回の短期調査で、一遺跡あたりの記録に要する時間が判明したため、メインとなる2017年度の調査計画を立てやすくなった。 当初は2017年度に予定していた調査成果の一部を得る形になったため、これを国内の所属学会および関連研究会にて発表した。1960-70年代にネペーニャ下流域を踏査した米国の考古学者Proulxが地方発展期であると時期比定した複数の居住および墓地遺跡等を、より古い形成期に位置づけし直すことを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画では、2017年度の調査を準備する一環として、初年度は調査エリアの視察を行う予定であった。しかし、ドローン操作技術習得が順調であったことなどから、初年度より現地にドローンを持ち込み、一部の遺跡にて空撮と三次元測量を試行することになった。結果は想定より良好であり、空撮画像・三次元測量図・踏査の組合せによって、小規模な形成期遺跡を同定することができた。時期比定には、代表者が2000年代に近隣遺跡の発掘調査から確立した土器編年が利用できた。以上のことから、2017年度の本調査は申請時の想定より短期間で遂行可能となり、かつ確実な成果が見込まれる。 なお、上記ドローン操作の実習は、研究分担者の居住地にほど近い兵庫県加東市にて許可を得て行った。この技術習得が予定より早かったこと等により、初年度から現地での空撮・三次元測量が可能となった。 データベースの準備に関しては、研究分担者が主となって順調に進めている。後背地に関する文献研究も、その一部成果を学会発表に利用することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年8月にペルーへ渡航し、フィールドワークを実施する。ネペーニャ川下流南岸のワカ・パルティーダ遺跡周辺エリアは2016年夏の短期渡航時に調査したため、南岸ではその範囲外に焦点を当てる。さらに、米国の考古学者Proulxが1960-70年代に踏査・登録したPV31-27とPV31-192をはじめとする、北岸の諸遺跡を広く踏査・空撮・測量する。代表者が発掘調査によって確立したネペーニャ川下流の形成期土器編年を参照し、未登録の遺跡は新規に時期比定し、Proulxによって登録済みの遺跡は時期を再検討する。 エル・ニーニョ現象の影響で2017年3月にペルー海岸部を襲った記録的豪雨・洪水は、ネペーニャ川下流域にも被害を与えていることが、現地協力者等からの情報提供で判明している。ドローン空撮時に調査エリアにおける洪水跡等も記録できるため、後背地の立地と自然災害との関係についても研究の範囲を広げる可能性がある。 これらの結果をとりまとめ、年度内に学会・研究会等で発表し、論文の準備を進める。
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Causes of Carryover |
ドローン購入費およびペルー国内での旅費が、当初の予定より若干低く抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年8月の調査結果および2017年3月のペルー海岸部の豪雨・洪水被害から着想を得た、派生的・副次的研究テーマ(後背地の立地と自然災害の関係)に関する各種データ取得費用として利用する。
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