2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study on the Production of Pottery and its Management before and after the Introduction of Kilns during the Formation of the Ancient State in Japan and Korea
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16K03170
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長友 朋子 (中村朋子) 立命館大学, 文学部, 教授 (50399127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 公私立大学の部局等, 係長 (00389595)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 国家形成期 / 窯技術 / 土器生産の変化 / 東アジア / 日本列島 |
Outline of Annual Research Achievements |
器物生産管理は国家形成期における重要な要素であるが、日本列島では窯導入に際して大きな変化が認められる。そこで、本研究では東アジア周辺部である朝鮮半島と日本列島の窯の技術系統と野焼き土器を含めた生産体制とその変遷の解明を目指した。 最初にこれまでの研究(深澤2011ほか)を参照し、中国の窯を系統的に整理した。そして、窯系統による焼成温度の差異を指摘し、韓半島における二系統の窯伝播を明らかにした。すなわち、楽浪郡を介して華北の低温焼成の平窯を導入したのち(中村2017)、華南の高温焼成の窖窯の影響を受けて変容したことを示した(長友2019)。また、窖窯の受容に際して韓半島で東西差が生じたが、日本列島へ伝播した最初期の出合窯は韓半島西部からの影響を受けるが定着せず、陶邑窯や宇治市街遺跡などの初期窯は主に韓半島東部からの影響を受けてその後定着したことを明らかにした。 さらに、韓半島の土器生産体制において、①窯群の独立する陶質土器の専門工人集団、②一集落に居住する陶質土器と野焼き土器製作者の混合工人集団、③野焼き土器製作のみの集団の3つが併存することを示した。そして、伽耶土器、陶邑窯、宇治市街遺跡出土土器を理化学的考古学的に分析し(長友編2017)、陶邑窯は①、宇治市街遺跡は②の渡来工人集団により窯技術が伝えられたことを示した(長友2018)。従来、窯の導入においては「多地域での導入」と「陶邑窯の中心性」が対立的に論じられてきたが、上記の検討の結果、韓半島の複雑な土器生産体制を継承しため、日本列島各地の初期窯の規模や継続性に差異が生じ、各窯の経営と生産管理にも影響を及ぼしたという理解に至った。加えて、理化学的考古学的分析により和歌山県出土の初期須恵器が在地生産である可能性の高いことが判明し(長友他2019)、窯野焼き土器製作者混合工人集団の渡来の可能性が考慮された。
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