2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03185
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 真 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40336251)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人文地理学 / 地域経済 / 地域社会 / 原子力発電所 / 地域性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に,福島第一原発立地地域およびそれ以外の原発立地地域における同原発事故前後の地域経済の動態についての調査を進めることができた.その結果,昨年度までの研究で明らかになった原発立地地域の経済的・社会的・政治的動態の地域性(先発立地地域-後発立地地域など)および共通性(原発立地後の地域経済・社会・政治の変質過程など)が,福島第一原子力発電所事故以降の地域動態の説明においてもかなりの程度において維持されていることが明らかになった. 福島第一原発立地地域では,避難指示により住民が存在しない中でも建設業者の多くが維持され,復興工事や除染作業の受注を通じて,小泉純一郎政権時の公共事業の大幅な縮減による経営危機を脱し,かなりの資本蓄積を実現すると共に地域経済・社会・政治におけるプレゼンスを強めている.その一方で,これらの事業がピークを超えていく中で今後の中長期的な事業展開の模索が続けられている点が注目される.これらの工事・作業労働者に対する需要によって支えられた商業・サービス業や,復興事業によって大幅に財政規模が拡大した,当該地域の地方自治体の行財政についても同様のことがあてはまる. 他方で,廃炉の決定や再稼働の遅れに直面している,その他の原発立地地域では目に見えるような形での地域経済・社会・政治の変化は認められなかった.とりわけ,リスクの認識や反原発の動きが高まっていく中で原発を受け入れた後発立地地域の多くは地理的隔絶性が高く,他にとりうる振興策が限られているため,こうした傾向がより強く認められる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料渉猟および分析,現地調査は概ね予定通り進んでいる.ただし,成果公表がまだ十分にできておらず,次年度の課題としたい.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度となる本年度は,主に成果の取りまとめと学会等での発表・論文公刊を中心に研究を進める.各種データのアップデートや補足調査も随時実施する.
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Causes of Carryover |
本年度中に予定していた論文の投稿作業等ができなかったために残額が生じてしまったが翌年度の執行を予定している.翌年度分として請求した助成金は,主として研究最終年度における成果とりまとめのために利用する予定である.
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