2016 Fiscal Year Research-status Report
大阪生野コリアタウンにおける新たな重層的・複合的空間への変容実態に関する研究
Project/Area Number |
16K03199
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
孫 ミ京 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (90756371)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | 大阪生野 / ワンコリア / 在日コリアン / 文化運動 / ワンコリアフェスティバル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①ホスト社会(日本・マジョリティー)-在日社会(朝鮮半島・マイノリティ)【National・エスニシティ】、②北(総連)‐南(民団)【National・イデオロギー】、③ソウル(中央)‐済州島(周辺)【Regional】、④在日コリアンオールドカマー-在日コリアンニューカマー【generation】など多層的・複合的な空間である大阪生野コリアタウンにおける多層的・複合的空間に生きる人々【people】を対象に、日常的生活空間におけるホスト社会とマイノリティの関係に着目することで、そこに生きる人々の姿を明らかにすることを目的としている。今年度は、研究目的に沿いながら主に②にフォーカスを合わせて調査を進めた。未だに、大阪生野は「在日コリアンのアイデンティティの生成・発信・確認の場」という空間認識が強く残っている中、北-南【National・イデオロギー】を乗り越えようとする動きとして現れたのが「ワンコリアフェスティバル(以下、ワンコリア)」である。このワンコリアが持つ意義や在日コリアン社会と日本社会、祖国である韓国、ひいては海外コリアン社会にどのような影響を及ぼして来たのかについて検討を行った。その結果を「在日コリアンにおける文化運動としてのワンコリアフェスティバルの意義」、『空間・社会・地理思想、第20号』に発表した。朝鮮半島のように物理的な38度線は引かれてない「大阪生野」という空間が存在し、また、日本の近・現代史の一部である在日コリアンの存在によって統一運動という極めて政治的な運動が文化を媒体にした文化運動として海外コリアン社会にも広がり、ネットワークの構築へと繋がっていることはワンコリアがもたらす波及性であることを今年の研究で明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究は、平成28年度の補欠として採択されたため、研究の開始ガ遅れた。具体的に進んでない点は、日本人社会やコミュニティーの聞き取り調査であり、商業を営みつつ暮らしている在日はもちろん、日本人も含め、「ビジネス空間」や「生活空間」が融合した「場」として、コリアタウンがいかに構築されてきたのかということに注目しながら、ホスト社会・コミュニティへのインタビュー調査を行い予定であった。が、準備不足でこの当初予定より、やや研究が遅れている状況である。その一方で「ソーシャルネットワーク分析」を通じて、ホスト社会や在日社会の関係性、また、在日コリアン個人間の関わりが可視化できることに至った点に関しては、当初予定していたことよりも事実収集が進展したと評価している。また、平成28年度には、研究の成果を報告することができなかったが、今年度はさまざまなところで研究成果を発表する予定である。、計画を少々見直しながら平成30年度までには計画通り研究が終わるように努める所存である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には研究課題【①】のホスト社会・コミュニティへのインタビュー調査を進めながら、【②】の生野―済州島との関わり調査を同時に行なう。①に関する調査の目的は、今まで在日コリアンは社会的・文化的背景異なるエスニックグループとしての「社会的集団」という側面が強調され、日本人とは違う他者である在日が取り上げられ、在日個々人が見えにくい状況であることや、マイノリティである在日だけが取り上げられ、むしろホスト社会である日本社会・コミュニティや日本人商店主は周辺化されてきたことにより、日常的「生活空間」におけるホスト社会との関係やそこに生きる人々(在日や日本人を含む)が描き切れていないことなど先行研究における欠落を埋めるためである。②に関する調査は「済州島四・三事件在日本済州4・3事件犠牲者慰霊祭」を共催する在日本済州四・三事件遺族会の協力を得ながら進めたい。この調査を通じて、済州4・3事件以後から1970年代まで密航などにより渡日した在日一世が生野に定着していく過程を一部を描くことができると考えられる。
|
Causes of Carryover |
28年度の補欠として採択されたため、研究開始が遅れており、予算も執行できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
遅れた研究を順調に進みながら、インタビュー、研究実績の発表を積極的に行う予定である。
|