2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03223
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
谷部 真吾 山口大学, 人文学部, 准教授 (80513746)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 祭礼 / けんか祭り / 暴力 / 脱「暴力」化 / 高度経済成長期 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究において事例として取り上げる3つのけんか祭りの現状を把握するために、富山県高岡市の伏木曳山祭を5月14日~16日に、兵庫県尼崎市の築地だんじり祭り9月15日~19日、静岡県周智郡森町の森の祭り11月3日~6日に、それぞれ参与観察を行った。その結果、各祭礼が現在「穏やかに」運営されていることを確認した。また、伏木曳山祭が脱「暴力」化していった過程を明らかにするための聞き取り調査および新聞記事収集を、9月4日~11日に実施した。これによって、当祭礼が高度経済成長期に変容していったプロセスをより詳細に明らかにすることができた。 また、戦後の日本の社会的・文化的状況や、その当時の地域社会の実態を理解するために、関連文献の収集・精読を行った。この作業を通して、各地のけんか祭りが似たような時期に脱「暴力」化していった理由を分析する際に必要となる、基礎知識を獲得することができた。 さらに、最先端の研究動向を把握するために、日本文化人類学会第51回研究大会(5月27日~28日)ならびに日本民俗学会第69回年会(10月14日~15日)に参加した。なお、日本民俗学会では、研究発表も行った(発表タイトル:「批判されるけんか祭り ―高度経済成長期の伏木曳山祭(高岡市)を事例として―」)。加えて、祭礼研究を精力的に進めている江戸川大学の阿南透教授や、長野大学の中里亮平講師などと研究会を行ったり(4月29日、10月13日)、祭礼をテーマとした各種研究会、具体的には、第148回歴史地理研究部会(5月20日)、遠州常民談話会(9月30日)、第4回山鉾屋台研究会(10月13日)、現代民俗学会第40回研究会(12月17日)にも参加したりし、本研究のさらなる深化に努めた。こうした研究成果の一部を、論文「伏木曳山祭 ―熱狂と信仰と―」(阿南透(他・編)、『富山の祭り』、桂書房、2018年3月、pp.79-94)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各祭礼の参与観察を実施し、それぞれの祭りにおいて高度経済成長期以降に築き上げられてきた「暴力」を抑制するための仕組みが、現在でも有効に機能していることを確認することができた。また、伏木曳山祭に関しては関係者への聞き取り調査や新聞記事の収集を通して、当祭礼が警察やマス・メディアからどのように批判され、その結果、いかなる影響が見られたのかについて、理解することができた。さらに、文献資料を読み込むことで、戦後の日本社会全体の風潮、さらには同時期の地域社会の状況に関する知識を深めることができた。 なお、築地だんじり祭りと森の祭りに関して、平成29年度は関係者への聞き取り調査を実施できなかったが、9月(築地だんじり祭り)および11月(森の祭り)に行った参与観察の際に、両祭礼の脱「暴力」化について簡単なインタビューを試みていたことから、最低限の情報収集はできたと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、おおむね当初予定した通りに進んでいる。平成30年度も、引き続き新聞記事の収集に力点をおきたい。収集すべき記事としては、3つの祭礼に関するものであれば、好意的な内容であろうと批判的な内容であろうと、すべてコピーをとるつもりである。また、マス・メディアの祭礼を見るまなざしに変化があったか否かを探るためにも、少なくとも昭和期(1910~80年代)の記事には、一通り目を通す予定でいる。この他、各祭礼の参与観察、聞き取り調査、戦後日本の社会的・文化的状況や、その当時の地域社会の実態を理解するための関連文献の精読に関しても、予定通り実施するつもりである。 さらに、平成30年度は、10月に駒澤大学で開かれる日本民俗学会第70回年会にて、これまでの研究成果を報告したいと考えている。加えて、学会発表に向けた準備の一環として、各種研究会に積極的に参加することで、自らの考えをまとめると同時に新たな知識の獲得にも励むつもりである。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度の研究経費に関して残額が発生したが、これは2月半ば~3月半ばにかけてたまたま校務が重なったこともあり、思うように現地調査に行くことができなかったためであると考えている。 (使用計画) 平成29年度の残額分は、基本的に旅費として使用する予定である。平成30年度は、新聞記事の収集に力を入れる予定でいるが、この作業には時間がかかる。その時間を確保するために、現地での滞在日数を増やしたいと考えている。また、平成30年度は各種研究会への出席回数を増やし、秋に予定している日本民俗学会での口頭発表に備えたい。その他、消耗品費等に関しては、予定通り支出するつもりである。
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Research Products
(2 results)