2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03234
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
岩田 重則 中央大学, 総合政策学部, 教授 (20272619)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 両墓制 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の本研究は、本研究のために主に3地域でフィールドワークを行ない、また、研究成果を発信するための単著の執筆を行なった。 フィールドワークについて。三重県における「両墓制」と火葬墓制、また、三重県に隣接する「両墓制」地域の滋賀県、また、滋賀県に隣接して、「両墓制」と火葬墓制が顕著な福井県まで拡大して、墓制研究のためのフィールドワークを行なった。三重県では、その東部で火葬墓制が、中部・西南部で「両墓制」が顕著であるために、その比較的研究を、滋賀県では、湖西地域で火葬墓制から「両墓制」への転換が見られるため、それをフィールドワークのなかから明らかにするための研究を、福井県では東部の越前地域では火葬墓制が、西部の若狭地域で「両墓制」が顕著であるために、その比較的研究を行なった。本研究課題の「両墓制」と火葬墓制の比較研究は、これら2016年度のフィールドワークにより、仏教民俗としての質的同質性が仮定でき、設定した課題の適合性について、自信を強めた。2017年度についても、これらの地域を中心に、フィールドワークによるいっそうの資料収集につとめたいと考えている。 単著の執筆について。2016年度は、フィールドワークと並行して、本研究の成果について、2017年5月刊行予定『天皇墓の政治民俗史』(有志舎)の執筆を行なった。本書は、天皇墓についての議論が中心であるが、それと質的に関係する民間の墓制として、「両墓制」と火葬墓制があると考え、特に、その第2章「中世――天皇の「西方極楽」往生」のなかで、2016年度の火葬墓制と「両墓制」についてのフィールドワークの成果を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「両墓制」と火葬墓制とを、仏教民俗として同質性をもってとらえ、「両墓制」とはそもそもどのような墓制であるのかを解明することを目的としている。2016年度のフィールドワークでは、このような仏教民俗的同質性を充分にとらえることができていると考えている。特に、フィールドとした三重県・滋賀県・福井県では、火葬場だけではなく「両墓制」の遺体埋葬地点をサンマイ(三昧)という仏教用語によって表現し、葬送儀礼のみならず、サンマイにおける棺台などの装置も同質性が高いことが確認できた。本研究の課題を論証するためには、「両墓制」と火葬墓制の両方から、仏教的性格を抽出することが重要になるが、それが順調にすすんでいると考えている。 また、研究成果の発表という意味でも、刊行は2017年5月予定であるが、単著『天皇墓の政治民俗史』のなかに、これら本研究課題によるフィールドワークの資料を活用することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、おおむね順調にすすんでいると考えているので、2016年度に行なってきたフィールドワークによるインテンシブな資料収集を継続していきたいと考えている。フィールドワークによる資料の正確さと事例数を増やすために、2016年度に行なった地域、三重県・滋賀県・福井県の「両墓制」と火葬墓制のフィールドワークをさらに深化・拡大させていきたい。特に、2016年度のフィールドワークのなかでいっそうの必要性を感じたのは、三重県の「両墓制」と火葬墓制の比較研究、また、福井県若狭地域の「両墓制」資料収集である。ただし、若狭地域は、日本海側になるために、冬季の積雪を考慮する必要があり、夏季・秋季を中心にフィールドワークにつとめたいと考えている。 従来の研究でも「両墓制」資料は数多いものの、本研究のような、仏教民俗的視点による資料収集ではなかった。そのために、仏教民俗的視点による本研究のための資料収集は実質的に新たに実行していることになる。いっそうの資料収集につとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究のフィールドワークは、墓制調査のため、屋外、しかも、樹木・草木などのなかでの調査をともなう。本研究のフィールド、三重県・滋賀県・福井県が、2016年12月から2017年2月の冬季、予想以上に寒く、積雪も時期が早く、量も多く、想定以上に、屋外でのフィールドワークが物理的に難しかった。そのために、予定していた冬季のフィールドワークが予定よりも早めに不可能となった。実際のフィールドワーク量がそのために減少してしまい、それが、このように、2017年度への使用額としての繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、2016年度のフィールドワーク計画で冬季にできなかった計画を見直し、気候の影響を受けやすい地域については、夏季・秋季に集中させたいと考えている。2016年度の冬季、気象の影響により実施できなかった、特に、滋賀県・福井県でのフィールドワークを、2017年度はまずは優先させたいと考えている。
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Research Products
(2 results)