2016 Fiscal Year Research-status Report
現行学校教育における「伝統」文化の分析及び活用の可能性についての総合的研究
Project/Area Number |
16K03243
|
Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
高木 史人 関西福祉科学大学, 教育学部, 教授 (70329845)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 敬一 静岡大学, 教育学部, 教授 (10252157)
立石 展大 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (20568505)
蔦尾 和宏 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (50510765)
伊藤 利明 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (10191884)
生野 金三 関西福祉科学大学, 教育学部, 教授 (10187510)
浮田 真弓 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40309018) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 昭和初期に固定化された伝統イメージ / 昔話研究と昔話教材との乖離 / 郷土教育への子どものイメージ / 創られる二宮金次郎説話 / 辞書引き学習に使えない伝統 / 創られる伝統 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、当初の計画通り、12月3日に第71回日本口承文芸学会研究例会において、シンポジウムを行った(会場・関西福祉科学大学)。これには日本昔話学会・日本民話の会後援ならびに関西福祉科学大学学会開催助成を受けた。その概要をここに掲げる。 (タイトル)現在の学校教育における「伝統文化」教育の位相を問う――教科書教材・授業実践の事例などを通して―― (パネルごとのタイトルとパネリスト)(1)平成18年度改正教育基本法に掲げられた教育目標「伝統文化」と教科書教材の推移 髙木史人(関西福祉科学大学)/(2)小学校国語教科書における中国昔話について 立石展大(高千穂大学)/(3)小学校国語教科書におけるヨーロッパ昔話について 久保華誉(外国民話研究会日本民話の会)/(4)二宮金次郎の説話と道徳教育 伊藤利明(関西福祉科学大学) /(5)「伝統文化」と学校教育の実践 ──新潟県村上市の場合──矢野敬一(静岡大学)/(6)コメント 蔦尾和宏(岡山大学)・生野金三(関西福祉科学大学)/司会 高木史人 「伝統」という語そのものが持っている昭和初期の一般化という新しさ、意味の曖昧さがそのままに教材化されている問題点が浮き彫りにされたと思う。今後は、それらを如何にして「主体的・対話的な深い学び」に繋げていくかが問われることになるだろう。 なお、シンポジウムに際して、当該研究の前段階にあった科研(基盤(C)24520927)「昭和初期の民俗学・口承文芸研究と隣接諸科学との影響関係についての基礎的研究」の報告書『「採集」という連携』が配布され、当該研究との関連への注意が喚起された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シンポジウムにおいて、当該研究へのイメージが聴衆と共有され、深い議論ができた。また、研究分担者の蔦尾和宏の言うように、昔話の中心テーマとされる「幸福なる婚姻」(柳田國男)は、教材において男女関係が禁忌とされることなどと関連するとの指摘がなされるなど、当初の考え以上の教材を取り巻く背景が浮上してくるなど、新しい研究に広がる要素が見えてきた。 なおシンポジウムについて、個々にコメントすると、髙木は日本の昔話の教材が、昔話研究の水準を踏まえていないことを指摘し、また、児童用の国語辞典の口承文芸に関係する語彙がやはり研究水準を踏まえず、誤解に満ちていることを指摘した。立石・久保は外国の昔話教材がグリムを中心にヨーロッパに傾いていることと、中国の場合は少数民族の昔話に傾いているたと、小数の翻訳者の業績に偏っていることを指摘した。伊藤は、二宮金次郎の道徳教材が史実を無視して説話化した素材を用いていることを指摘し、歩き読書(スマホ的)の美化など今の教材としての問題点を指摘した。矢野は、新潟県村上市の鮭漁・料理を郷土文化として学習させる背景として、村上では武家が独占していた漁業権の問題などとは関係なく、市民全体の伝統文化として教えられることと、現在の児童には生臭物を料理する気味悪さが意識されているなどの問題点が指摘された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、より精密に資料の捜索を行い、昔話教材や郷土教育の実践例の蓄積と分析を進める一方で、より幅広く伝統教育の対象を広げて考察したい。 具体的には、平成29年度には、前年度に蓄積された知見をもとに、個々に「伝統」文化と見做されているものの調査を行なう。それらは、高木史人、立石展大、矢野敬一等はフィールドワークを中心とし、蔦尾和宏はや古典籍資料の蒐集と分析・解釈を中心とし、伊藤利明は道徳教材を、生野金三は児童文学作品を中心とするが、各研究者がそれぞれの追尋する「伝統」文化と教育事例や教材等との距離の測定・吟味を行なう。平成29年度には当該研究に携わる者の討議の場設けることを予定している(関東地方の研究機関利用を予定)。 平成30年度は当該研究をまとめ上げる時機と位置づけて、各研究者は論文の執筆を行ない論集(研究報告書)を刊行する。同時に共同討議を企画して広く研究者や市民への研究成果の公開を行なう(関東地方の研究機関利用を予定)。この他、日本学術振興会による「小・中・高校生のためのひらめき☆ときめきサイエンス」に応募して、児童・生徒・教員等への研究成果の還元を行なうことを予定している。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した原因として考えられるのは、12月3日に行ったシンポジウムに係る諸費用の内、当初、科研費から支出する予定だったものが、関西福祉科学大学の学内助成である学会開催助成が採択されたため、当該助成を活用して広報活動をするなどしたための剰余だと考える。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用計画としては、引き続き研究の深化を実践するために、文献購入に宛てる予定である。
|
Research Products
(20 results)