2016 Fiscal Year Research-status Report
スリランカ系タミル人によるインド舞踊の発展と再々構築化に関する全体関連的研究
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16K03247
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
竹村 嘉晃 国立民族学博物館, 南アジア地域研究国立民族学博物館拠点, 拠点研究員 (80517045)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インド / 古典舞踊 / グローバル化 / スリランカ系タミル移民 / メガシティ / ネットワーク / コミュニティ / 「タミル化」 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題実施の初年度にあたる今年度は、当初の計画通り予備調査で得たデータの整理と映像資料の分析および関連する文献研究に加えて、シンガポールでのフィールドワークを実施した。 これまでの調査で記録したインド舞踊に関する映像と収集したDVDを分析し、バラタナーティヤムにおける流派や出身校による振付・動きの違いを考察した。また聞き取り調査で得た情報と文献研究を通じて、スリランカ系タミル移民コミュニティの文化実践に関する世界的な動向を把握した。さらに国内研究協力者と3回の会合を開き、先行研究に関する討論と各自の研究進捗状況の報告、フィールドワークに関する情報共有を行った。 これらの基礎資料と文献研究によって得られたさらなる知見をもとに、シンガポールにおけるインド舞踊の伝播・発展の過程におけるスリランカ系タミル人の関与について、2017年1月20日から31日にかけてシンガポールで現地調査を行った。具体的な調査内容は、スリランカ系タミル人コミュニティの歴史的動態と今日の文化的活動に関する聞き取り、インド舞踊を教授する芸術機関におけるスリランカ系タミル人指導者・実演家の特定と彼らへの聞き取り、スリランカ系タミル人が管理するヒンドゥー寺院の活動内容の把握と関係者への聞き取りを行うことであり、順調に調査計画を遂行することができた。 くわえて、本研究の進捗状況をシンガポール国立大学南アジア研究プログラムのセミナーにおいて口頭発表し、現地の研究者と情報を共有するとともに、研究に関する今後の指針や助言などを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は、シンガポールの各種機関においてスリランカ系タミル人コミュニティの歴史と文化実践に関する情報収集を主に実施した。タミル語による文献資料の収集が十分な成果をあげられなかったものの、インド芸能を教授する機関が発行した非売品の英文資料やスリランカ系タミル人が中心メンバーであるカンパニーの過去の公演パンフレット、スリランカ系タミル人が運営するヒンドゥー寺院関連の刊行物が収集できたことは、貴重な基礎資料となる点で大きな収穫といえる。一方、国内研究協力者との会合において、本研究に関する外部研究者の助言を得るべく招聘を試みたが、スケジュールの都合がつかないことから次年度に持ち越しとなった。次年度での研究者招聘の調整は既に進行中である。 全体として、28年度は国内研究協力者と従来の研究に関する問題点を共有しながら研究を進め、調査データの整理や映像資料の解析、シンガポールでのフィールドワークともに研究計画を順調に実行することができ、十分な調査成果をえることができた。29年度はこれらの知見をふまえ、個人の研究ならびにフィールドワークにおいて新たな展開を得るべく、国内・海外研究協力者と研究を共有する機会をさらに増やす必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題実施の2年目にあたる平成29年度は、当初の計画通りシンガポールとスリランカでバラタナーティヤムの発展に関するフィールドワークを実施する。初年度の調査成果をふまえ、スリランカ系タミル移民のグローバルなネットワークとメガシティ間の移動、また故国での凱旋公演などについて聞き取り調査を実施し、研究目的であるスリランカ系タミル移民たちのコミュニティ形成において、バラタナーティヤムがどのような役割を担っているのかをより実体的に把握することが可能であると考える。また初年度に実施したフィールドワークにおいて明らかとなった、スリランカ系タミル移民たちの「インド中心主義」的な意識や作品創作について、スリランカにおけるバラタナーティヤムの受容・発展とその動態に関する調査を実施する予定であり、それらを通じてディアスポラ・コミュニティにおける動向との比較検証が可能となる。
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Causes of Carryover |
研究会で招聘を予定していた研究者のスケジュール調整がつかず、その分の旅費の支出がなかったことから次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は7月に国際学会International Conference on Asian Scholars(タイ・チェンマイ)の参加、8月に現地調査(インド)、11月に国際シンポジウム The 1st Asian Consortium for South Asian Studies on‘South Asian Diaspora and Popular Cultures in Asia'(タイ・バンコク)の参加、平成30年1月に現地調査(スリランカ、シンガポール)を予定しているため、旅費の支出が当初の計画より多額になることが想定される。そのため、前年度に生じた未使用額については、今年度の旅費に充当して適正な執行を行う。
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Research Products
(2 results)