2016 Fiscal Year Research-status Report
刑事法における国民主権原理の規範的意義・限界に関する研究
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16K03285
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山崎 友也 金沢大学, 法学系, 准教授 (80401793)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国民主権 / 統治主体 / デモクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度前半は,「司法制度改革審議会意見書」のいう「統治主体」(「人権主体」)としての国民という概念設定を軸に,国民主権原理に関する日本の判例・学説を網羅的に分析した。国民主権原理の内容に触れた最高裁判例のほか,国民主権原理の代表的学説とされる芦部信喜説いうところの主権の「権力性の契機」ないし「正当性の契機」から「国民の責務」を抽出できるか検証した。同説は,「国家」の同一性を,「国民共同社会の一体性の理念」と解しているので,「共同社会」を維持すべき国民の「責務」の抽出が可能のように思われるが,同説の国民主権原理はもっぱら参政権・統治機構の民主的正当化のための原理であるのに対して,同じく国民主権原理について折衷説的見解を採る佐藤幸治説は国民主権原理からのみならず,人格的自律権保障のための「環境」として,国民の「責務」を抽出しているように見える点が非常に対照的であると考えられる。 当該年度後半は,上記のような日本の古典的学説の思考に対して,英・米・独における国民主権(民主制・民主主義)原理と国民の刑事手続への参加(陪審・参審)との関係を判例・学説の整理分析に着手した。「主権」概念自体の有無,民主主義理解の相違を看取しえた。憲法典に国民の「責務」ないし「義務」を定めた規定があることが当然に憲法解釈を左右すると理解されている国がある一方,憲法典の規定以前に,「政治文化」とでもいうべきものから国民の「責務」を導き出し,これに一種の「不文憲法」的地位を与えて憲法解釈の考慮要素にしている国があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度前半は,交付申請書「平成28年度の計画」に記載した通り,日本の学説における「国民主権」原理における複雑性を多少なりとも解明できた。また,当該年度後半も,上記「計画」に記載した英・米・独における国民主権原理(民主政原理)と陪審(参審)との関係理解を通じて,同原理が各国で有する意義と限界をかなりの程度明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度後半に行った英・米・独における国民主権原理(民主政原理)と陪審(参審)との関係理解を補充・補完するために仏国における上記理解の解明を行い,そのうえで研究成果を主に北陸公法判例研究会で披露し出席者との意見交換により修正し,紀要等で順次公刊していく。
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[Presentation] 立憲主義を学ぶ2016
Author(s)
山崎 友也
Organizer
2016年日本科学者会議北陸地区合同シンポジウム
Place of Presentation
近江町いちば館交流プラザ(石川県金沢市)
Year and Date
2016-04-09 – 2016-04-09
Invited