2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03297
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
宇那木 正寛 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (90747651)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 行政の義務履行確保 / 行政上の強制執行 / 行政代執行法 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の行政上の強制執行の通則法として、行政代執行法がある。同法は、行政上の強制執行において重要な法システムにあるにもかかわらず、日本国憲法下で昭和23年に制定され、それ以来一度の改正も行われていない。加えて、戦前の行政権の強権的発動への反省から、非常に謙抑的なシステムとなっている。その結果、現在の多様な行政ニーズに対応できず、制度疲労を起こし、行政庁は代執行権の行使が困難な状況となっている。 そこで、本研究においては、現代の多様な行政ニーズに応じて、国民の生命財産を保全するといった観点から(1)行政代執行がなぜ躊躇され、行政機関による適正な権限発動がなされてこなかったのか、(2)代執行を行った行政庁は、どのようにして、制度上の課題を克服してなされたのか、について現実に行われた行政代執行を廃棄物行政、河川・港湾行政、都市計画行政などの分野ごとに、実証的分析を行うとともに、代執行制度を効果的かつ効率的に運用するための提言を行うことを目的とするものである。 初年度である平成28年度、鹿児島県が行った急傾斜地法に基づく崩落斜面の応急工事の緊急代執行についての訪問調査を行った。その後も、岡山市が行った廃棄物処理法に基づく硫酸ピッチ撤去の代執行、三原市が行った建築基準法に基づく廃屋に対する除却の代執行、広島県が行った河川法に基づく違法桟橋に対する除却の代執行、港湾法に基づく放置艇の撤去・移動の代執行などについての訪問調査を行った。 このうち、鹿児島県が行った急傾斜地法に基づく崩落斜面の応急工事の緊急代執行については、「急傾斜地法に基づく措置命令の緊急代執行(上)(下)」判例地方自治409号83-89頁、同410号91-95頁に研究成果として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本件研究は、現実に行われた行政代執行の実証的分析により行政代執行の運用上の課題を明らかにし、効率的かつ効果的制度運用について提言を行うことを目的とするものである。 実証的分析には、行政代執行実績を有し、かつ、調査について積極的な協力を得られる行政機関を見つけ出すことが必要であるが、このこと自体、容易ではない。 この点に関し、平成28年度は、代表者自身の人脈を通じて、当初計画より多くの行政機関に協力をいただき、現実に訪問調査を行うことができた。そのため「おおむね順調」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である平成29年度は、平成28年度に行った、(1)岡山市が行った廃棄物処理法に基づく硫酸ピッチ撤去の代執行、(2)三原市が行った建築基準法に基づく廃屋に対する除却の代執行、(3)広島県が行った河川法に基づく違法桟橋に対する撤去・移動の代執行、港湾法に基づく放置艇の撤去・移動の代執行などについての訪問調査の結果を分析、検討し、研究成果として発表する予定である。 また、初年度と同様に、代執行事例についての情報収集を精力的に行い、訪問調査及び意見交換が可能な行政機関を選定したい。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であったモバイルパソコンの購入を控えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度平成28年度購入予定であったモバイルパソコンを購入する。
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Research Products
(2 results)