2016 Fiscal Year Research-status Report
議会による委任立法統制制度の実効的運用に関する日英比較法研究
Project/Area Number |
16K03314
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 祥貴 桃山学院大学, 法学部, 教授 (20398548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 議会制度 / 行政統制 / 委任立法 / 憲法保障 / 英国議会 / 参議院 / 委員会制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、比較憲法学の視点から、議会による行政統制を実効的に担保する制度論を構築することを目的としている。就中、官僚支配の象徴的な法現象である「委任立法」に対する議会統制という問題を取り扱う。また、本研究は、英国議会の制度を、主な比較研究の対象とする。その理由は、近年、英国で展開されてきた多くの制度改革は、議会による委任立法統制機能を飛躍的に向上させており、さらに現在でも、英国は上院改革の過渡期という流れの中で、委任立法に対する議会(上院)による統制の問題に非常に高い関心を保持しているからである。これまでの制度改革及び今後の展開における英国の経験知から、我が国の国会が目指すべき方向性に一定の示唆を得たい。この点、我が国の議会制度において、委任立法の統制に中心的役割を果たしうるのは、参議院であろうと推測する。そこでまず2016年度は、上記の目的に沿って、日英の比較法研究の下準備を行うことを計画し実施した。すなわち、そもそも我が国の憲法枠組の中で、今後、参議院が基軸となって行政(委任立法)統制を担うという構想は許容しうるものなのか。それはいかなる憲法解釈から許容されるのか、また、そこから参議院はいかなる機能・権限が行使可能となるのか、について議論を整理する必要がある。これらの分析は、当該研究テーマをめぐる日英比較制度論の可能性を確認する作業といえる。そして、今年度の研究結果により、日米比較制度論の有効性を確認するに至った。その研究成果は、2016年10月日本公法学会公募セッション(於:慶應義塾大学)において研究発表(単独)を行い、さらに、2016年12月桃山学院大学総合研究所紀要第42巻2号1-22頁にて研究論文「参議院の憲法的定位」(単著)にまとめてすでに公刊済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度の研究成果は、前述の学会発表及び研究論文公刊で示した通り、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度以降は、英国上院の行政統制機能に関する研究をさらに深化させることに主眼を置く。2017年度は、英国上院に設置されている委員会制度(主として憲法委員会)について、現地での研究調査を踏まえて、英国での憲法保障体系における位置付け、権限、構成、及び実際的機能を調査研究する予定である。また、2018年度は、その研究成果を我が国の参議院再編構想に比較法的視点から活用していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、2016年の夏期休暇に実施予定であった英国での現地調査に関して、体調を崩した事情により、かかる現地調査を実施することができなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の夏期に、昨年度の未実施調査を完結すべく、当初の予定滞在期間を延長する対応が必要となる。当該2016年度の未使用額はその延長対応のために生じる不足予算を補うために使用する予定である。
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