2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03315
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
前田 雅子 関西学院大学, 法学部, 教授 (90248196)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 若者 / 支援 / アウトリーチ / 協働 / 社会保障 / 行政法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、とくに若者の自立の支援に焦点を合わせて研究を行った。 支援の運用実態を知るため、日本では京都若者サポートステーション、子ども・若者総合相談センター、京都府社会福祉協議会等、またドイツでは、「若者職業エージェント」(ハンブルク市、エッセン市、デュッセルドルフ市)、ドイツ連邦社会労働省、「ギャングウェイ」という若者を支援する民間団体(ベルリン市)その他の機関・団体を訪問してヒアリングを行った。その調査結果を踏まえて、日本とドイツの比較検討を行った。 以上をつうじて、ドイツでは、生活困窮をはじめ困難な状況にあるにもかかわらず支援窓口へのアクセスが困難な若者に対するアウトリーチに政策上の重点が置かれるようになっており、そのための行政機関と民間団体との協働の仕組みづくりが整備され、制度化されるようになっているが、他方、日本では、子ども・若者育成支援推進法に基づく子ども若者総合相談センターが設置されてその運営が民間団体に委託されているものの、予算規模が小さく、公私協働の仕組みが十分整備されていないことが明らかとなった。 以上から浮き彫りとなった、とりわけ若者支援の現場で生じている課題をさらに敷衍して、支援のための公私協働の仕組み・プロセスを行政過程にどのように接合させ、反映させるかについて検討を行い、その成果を、「社会保障における行政法の課題」と題した論攷(行政法研究第20号191頁(2017年10月)掲載)の一部において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は日本の生活保護行政に焦点を合わせた研究を行い、能力の活用はこれを保護実施要件として一貫させるのは生活保護法の解釈上困難であること、むしろ受給者に対する自立支援の一環として捉えるべきことなどを明らかにした。その成果は、「個人の自立を支援する行政の法的統制」と題した論文を、法と政治第67巻3号1頁~39頁(2016年11月)に発表することができた。また、2017年度は、日本とドイツでの調査およびその比較検討を行い、その結果を踏まえ、自立支援のために公私の協働のための仕組みを整備し、そこでの支援プロセスを行政過程にどのように接合させ、反映させるかに関して研究を行った。その成果を、「社会保障における行政法の課題」と題した論攷(行政法研究第20号191頁(2017年10月)掲載)の一部として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、引き続き、日本とドイツにおける最低生活保障給付の受給者個人に対する支援について文献・行政文書を収集して検討を行う。また、ドイツに赴いて行政機関、民間団体、研究者等へのヒアリング調査を行う。 その結果を踏まえて、支援ニーズの探知、認定、実施に一連のプロセスにおける公私の協働、それを踏まえた行政判断のあり方とその統制について研究する。そのうえで、個人の自立する行政の法的統制のための理論枠組みを提示する。
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Causes of Carryover |
2017年度は、研究資料の整理・専門知識の提供等のための人件費・謝金を使用しなかったこともあり、次年度使用額が生ずることとなった。 2018年度は、次年度使用額を、当年度の助成金と併せて、研究課題の遂行に必要な物品の購入、ドイツをはじめ海外での調査旅費等のために活用することとする。
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Research Products
(1 results)