2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03375
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 立教大学, 法務研究科, 教授 (00335572)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日常的迷惑行為 / 性犯罪 / インターネット犯罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、日常的迷惑行為に属するもののうち、主として児童に対する性犯罪及びオンラインにおける迷惑行為に関して研究を行った。 前者については、ドイツ語圏における児童に対する性犯罪に関して包括的に分析を加えた上で、①絶対的保護年齢に属する児童の性的保護と②相対的保護年齢に属する児童の性的保護とを区別し、それぞれにおいて問題となる保護法益を明確化・構造化した上で、具体的な保護のあり方について検討を進めた。特に、②の類型においては、地位利用や児童の脆弱性の利用など、様々な下位類型が存在することを示した上で、我が国における児童に対する性犯罪について新たな判断枠組みを構築し、アドホックではない体系的な理解を可能とした。 後者については、オンラインにおける性犯罪、特に児童ポルノ犯罪については、世界的に重大な問題領域であるところ、近時特に問題となっているのはかかる児童ポルノがオンラインによって流通する現象であることを明確化しつつ、こうした流通に関与した行為者の刑事責任につき、ドイツ語圏における研究を広く参照した上で、我が国においても適用可能となる判断枠組みを定立した。また、オンラインにおけるハラスメントについては、近時特に問題となっているところ、オーストリアにおける2015年改正で新設された「オンラインハラスメント罪」について調査を行い、その具体的な内容を分析しつつ、我が国におけるオンラインハラスメントの法規制のあり方と比較した。 これらの研究成果は、いずれも我が国における性犯罪の理解を明確化しつつ、合理的に体系化したものであり、解釈論としてのみならず、今後の立法を考えるに当たっても十分に参照可能なものと評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、日常的迷惑行為に属するもののうち、主として児童に対する性犯罪及びオンラインにおける性犯罪を扱い、いずれも一定の業績を挙げている。 前者に関しては、2016年9月に公刊された雑誌論文「児童に対する性犯罪規定を巡る現状と課題」及び2017年3月に公刊された論文「児童に対する性犯罪について」『西田典之先生献呈論文集』として既に公表され、児童に対する性犯罪の判断枠組みを示したところである。日常的迷惑行為のうち、児童に対する性犯罪は大きな意味を持つものであり、この点について成果を公表できたのは、研究課題の大きな進展と評価できる。 後者に関しては、2016年9月にドイツ・ヴュルツブルク大学において「インターネット刑法:日独の比較」との題で講演を行い、詳細に検討を行ったところである。また、本講演を元に執筆された論文についても、平成29年度中にドイツで公刊される予定である。また、オンラインにおけるハラスメントについては、2016年11月に情報ネットワーク法学会の分科会の主査として当該問題を詳細に取り扱い、ドイツ語圏の中でも主としてオーストリアの2015年刑法改正について分析・検討を加えた。これについても、平成29年度中には大会講演録として公刊される予定である。 以上のように、平成28年度の研究については、いずれも当初の目的を相当程度に達成しているが、他方で、ストーキング規制の研究については、当初の予定ほどには進んでいない。したがって、おおむね順調に進展しているとの評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、ドイツにおける日常的迷惑行為のうち、家族構成員など、いわゆる親密圏に属する人々の紛争を巡る問題について特に調査を行う予定である。その観点から特に重要となるのは、①両親の間での子の奪い合いについての刑事的規制、及び②ストーカー行為に代表される、家族構成員や親密圏に属する人に対する迷惑行為についての刑事的規制である。 これらの事例類型は、日常的迷惑行為の大きな核をなす、親密圏における迷惑行為であり、他人同士で問題となる迷惑行為とは異なった性質を有する。平成29年度においては、そうした類型を中心に取り扱うことで、日常的迷惑行為に対する刑事的規制のあり方について、一定の視座を得ることを目的としている。 他方で、職場のような、家族ほどではないものの一定の親密さを有する場におけるハラスメントについても、極めて重要な問題領域である。平成29年度は、こうしたハラスメントの中でも、特に性的なハラスメントについて、ドイツにおける2016年刑法改正の内容を分析・検討しつつ、我が国に対する示唆を得ることを目的とする。 こうした研究を行うため、平成29年度にドイツ・ケルン大学の刑事法研究所に短期の研究滞在を行い、様々な調査・研究を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
購入予定の図書につき、大学個人研究費等、別個の予算からの支出を行ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において、パソコン等の必要な物品を購入するとともに、図書費に充てる。また、本来の助成金については、図書費などの他、出張費に充てる。
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Research Products
(4 results)