2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K03375
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 立教大学, 法務研究科, 教授 (00335572)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 家族と刑法 / 日常的迷惑行為 / 児童虐待 / 児童の拐取 / 刑事立法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前半の期間を中心として、日常的迷惑行為の中でも特に親密圏における問題事象の研究を行った。その基本的な柱は4つに分けることができる。 第1の柱は、前年度に引き続き、両親間における子の奪い合いと拐取罪の成否に関する研究である。前年度までに行ったドイツ語圏を中心とする広汎な比較法的検討の成果として、2019年度は、我が国におけるこの問題に関する最高裁判例の分析を行いつつ、なお解決されていない問題点を明確化し、その解決のための方法論的基礎を模索する論稿を公表した。 第2の柱は、前年度に引き続き、家庭内における児童に対する性的虐待を中心とした性犯罪に関する研究である。2019年5月に、国立臺灣大学における招待講演・ディスカッションを行い、台湾における問題状況との比較検討の上、我が国の家庭内における性的虐待の問題点について分析した。 第3の柱は、2019年5月に開催された日本刑法学会第97回大会のワークショップにおいて、児童虐待に対する刑事法的規制のあり方につき、親の有する懲戒権との関係で分析を行い、また、そうした研究の成果を公表した。従来、親の懲戒権は一定の限度での子に対する体罰をも許容するものと解されてきたが、児童虐待防止法の改正による体罰禁止規定の導入を受けて、こうした懲戒権にいかなる制約が生じ、また、それが刑法上の違法阻却事由にいかなる影響を与えるのかといった点について、比較法的分析や我が国の判例・裁判例分析を通じて一定の結論を示した。 第4の柱は、日常的迷惑行為の刑法的規制を考える上で重要となる刑事立法学に関する研究である。ドイツにおける麻疹予防接種「義務化」を巡る議論を丹念に渉猟することで、親の有する子に対する権利・義務と子に対する予防接種「義務」との緊張関係について分析・検討を加えた論稿を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、一方では前年度に掲げた課題について、予想以上に進捗したものと評価することができる。すなわち、親密圏における日常的迷惑行為に関しては、前年度の研究を更に推進することができた。また、児童虐待と民法上の懲戒権ひいては親の権利との関係、及びそれが刑法上の違法阻却事由や刑事立法学の枠組みにおいて提起する課題といった、新たな問題領域についても研究を推進することができた。 他方で、2019年度では、前年度からの懸案であったストーカー規制を中心とした研究についてはなお十分に進捗しておらず、その成果を公表することができない状況である。この点においては、なお本研究の進捗は十分ではないものと評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度において十分に推進することができなかったストーカー規制に関する研究を主として進める予定である。ストーカー規制は、DVや児童虐待のような親密圏における様々な問題と密接に関連するため、これらの問題における成果を十分に参照しつつ、ストーカー規制の今後のあり方について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度後期から国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))にかかる研究に従事し、想定された支出額の一部に変更が生じたため。 2020年度においては、必要となる書籍等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)