2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Current Status of Partial Tender Offers: Rethinking the Regulation on the Tender Offer
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16K03403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯田 秀総 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (80436500)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公開買付け / 部分買付け / キャッシュ・アウト / 少数株主の保護 / 株式買取請求権 / 敵対的買収 |
Outline of Annual Research Achievements |
部分買付けは、買付株式数に上限を付けて行う公開買付けのことをいう。部分買付けは、買収後も対象会社の上場を維持する目的などで実際に活用されている。日本の大手企業同士の敵対的公開買付けとして初の成立例もまさに部分買付けだった。この部分買付けにつき、本年度も、前年度に引き続き、理論の検討と、部分買付けによって企業価値を下げるような非効率的な企業買収が行われるかについて、日本の実際のデータを用いて実証的に検証する作業を進めた。 その結果として、部分買付けのメリットとデメリットを明らかにし、立法論の方向性を明らかにした。部分買付けのメリットは、第1に、買収者の資金制約の問題への対応になる点、第2に、対象会社の上場を維持できる点、第3に、敵対的買収者の買収監査の機会を確保できる点である。部分買付けのデメリットは、第1に、非効率的な買収が成立したり、非効率的な支配権の移転が生じるおそれがある点である。第2に、少数株主が害されるおそれがある点である。以上のとおり、部分買付けを容認することには、メリット・デメリットの両面がある。メリットは、理論的には存在する。そして、平均的な傾向として、少なくとも、部分買付けの対象となった会社の企業価値が棄損したという現象は観察されなかった。そのメリットを生かすのであれば、立法論としてはこれを禁止するべきではない。しかし、その前提として、デメリットへの対応が必要不可欠である。そして、デメリットの問題は部分買付けに固有の問題ではないから、部分買付けを禁止するのではなく、それぞれの問題に対応する別の対処策をとるべきである。 以上のほかに、公開買付け期間中に対象会社が配当を行うことによって生じる問題について、部分買付けの場合も含めて問題の所在を解明し、その問題に対する解決策としての立法論の提言を行った。
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