2017 Fiscal Year Research-status Report
家族法学におけるドメスティック・バイオレンスの横断的研究
Project/Area Number |
16K03427
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山口 亮子 関西学院大学, 法学部, 教授 (50293444)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ドメスティック・バイオレンス / DV / 片親疎外 / PA / 面会交流 / 監護者指定 / 親権者指定 |
Outline of Annual Research Achievements |
DVが家族事件に現れると、紛争性が高くなる。当該年度では、DVを含む高葛藤夫婦の面会交流、監護者・親権者指定事件について研究を行った。 研究では、高葛藤事例を、①DVや虐待がある場合と、②一方の親や子がDV等の正当な理由がなく他方親を拒絶している場合の2つに分けて、日本の裁判例を分類して検討した。DVの事例は、従来高葛藤事例としてたびたび登場していたが、学術上、片親疎外(Parental Alienation、以下PA)と定義される②の例も、近年の特徴的な事例として現れている。この分類により、DVがある場合には、被害親ではなく第三者への監護が必要な場合があること、裁判所はDVを認定しても必ずしも面会交流や親権者指定を否定しているわけではないこと、そして、DVとPAが双方から主張されているような事例では、裁判所の親権者指定判断が両極端に分かれることが明らかとなった。 DVもPAもその証明や認定が困難であり、DVの被害親が他方親と子との面会交流を拒むと、PAとされ、PAの被害親が面会交流を求めると、DVの加害者とされて、真の被害者が子から遠ざけられてしまい、子も父母間の紛争に巻き込まれ、子の利益を正当に保障されないという問題が生じる。DVとPAは表裏の関係にあり、アメリカでは「PAを誘発した悪い母親」対「DV加害者である悪い父親」という対立図式で中傷合戦が繰り広げられている。DVの擁護者は、PAを似非科学として批判することもあるが、もはや判例実務では重要な要件となっており、諸外国では研究も進んでいる。今日、DVとPAの問題は、精神医学、心理学および脳科学により、子の利益を検討する段階に来ており、わが国の実務もこれらの学際的検討が必要となってきている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、家族法事件においてDVが関わる事例のみならず、PAが関わる事例についても検討し、DVを多方面から研究し、論文として発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
DVに関する法手続きや、支援の実態について、研究を行うことを計画している。
|
Research Products
(4 results)