2019 Fiscal Year Research-status Report
性的マイノリティの人権救済をめぐる韓国の「積極司法」の構造的特質に関する研究
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16K03444
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡 克彦 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (90281774)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスジェンダー / 医療モデル / 自己決定モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、トランスジェンダー(以下、「TG」という。)の「医療モデル」について研究を進めた。TGによる性別変更の要件として韓国法では、日本法と同様に「生殖欠如要件」および「外性器形成要件」を必須する「医療モデル」法制を採っている。この二要件を課すようになった経緯や韓国社会の背景について解明を試みた。現地でのフィールドワークや関係機関への調査などを通して、TGによる性別の変更を認めつつも、精神のみならず、身体においても別の性としての外形を備えることで男性でもなく、女性でもない中間的な性の領域を排除しようとする厳格な「性別二元体制」が韓国法のジェンダーシステムのなかに内在していることを明らかにした。具体的には、国民登録、住民登録および住民登録番号に性別を表記することを国民に義務づけている。 韓国社会では、同性婚を法律婚として認めるような社会運動が見られるものの、キリスト教をはじめ多くの保守派を中心としたマジョリティ側ではそれに強く反対している。異性婚が法律婚の法的な前提となっている。その結果、TGに対しても、事実上の同性婚とならないように性別の不明な領域を極力、取り除く傾向が特に強い。 以上のような研究成果を『アジア法研究』12号(アジア法学会、2019)および「東アジア学会」で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前半はある程度、計画通りに進めることができた。ただし、2月、3月に現地のフィールドワークを予定していた。しかし、新型コロナ問題が生じてからは、日本から海外への渡航が自粛され、予定の研究計画を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、昨年度の後半に取り組めなかった研究課題を推進させるとともに、本研究の最終年度でもあり、総合的な研究結果を創出するように努めたい。
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Causes of Carryover |
2019年度末にコロナ問題が発生したために、研究後半に予定していた現地・韓国でのフィールドワークが実施できなかったことによる。
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