2016 Fiscal Year Research-status Report
1票の格差是正をめぐる議会・司法・有権者間の立法ゲームに関する司法政治論的な分析
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16K03480
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
浅羽 祐樹 新潟県立大学, 国際地域学部, 教授 (70403912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 司法政治論 / 1票の格差 / 公職選挙法 / 対話的違憲審査の理論 / 立法裁量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、議会選挙における1票の格差の是正をめぐって議会・司法・有権者の間で展開される立法ゲームを対象に、司法政治論の観点から日韓を比較し、それぞれの政治過程を分析するものである。 初年度である今年度は、憲法学における対話的違憲審査の理論と政治学の司法政治論を統合し、動態的な実証分析の土台となる理論的枠組みを構築することに努めた。議会も司法も、有権者からの反応を予め踏まえながら、法改正や違憲審査に臨む戦略的プレーヤーであることが重要である。さらに、日本の衆議院選挙と参議院選挙それぞれに対する最高裁判所の判決、韓国の総選挙に対する憲法裁判所の決定について、法廷意見はもちろんのこと、反対意見や補足意見など各裁判官の個別意見も精査した。 成果は次のとおりである。第1に、憲法典だけでなく、選挙制度を定める公職選挙法なども含めて「憲法体制」として捉え、各国を比較する専門書において、韓国事例を担当した。その中で、1票の格差是正をめぐって、憲法裁判所による「憲法不合致」決定を受けて国会が公職選挙法を改正するなどして、「憲法典の改正なき憲法体制の変化」が起きることがあることを示した。 第2に、日本でも、最高裁判所が直ちに「違憲(・無効)」にせず「違憲状態」という判決類型を用いるのは、「憲法の予定している司法権と立法権との関係」、さらには有権者との戦略的相互作用の中で、国会に公職選挙法改正における立法裁量を認めることで「対話」を続けているとも措定できると確認した。 第3に、朴槿恵大統領に対する有権者による退陣デモ、国会における大統領の弾劾訴追、憲法裁判所による弾劾審判・罷免決定という韓国における一連の過程について、大統領、国会、司法、有権者という4者の間で展開された立憲ゲームとみなして、一般向けに解説する本を執筆(刊行は平成29年5月)し、司法政治論のアウトリーチに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年1月から3月まで体調不良が続いたため(4月以降は回復)、十分なエフォートを確保することができなかった。そのため、日本の衆議院選挙と参議院選挙それぞれに対する最高裁判所の判決、韓国の総選挙に対する憲法裁判所の決定に関する精査が一部、完了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目に完了しなかった司法に対する調査を終えた上で、当初の予定どおり、議会・個別議員・個別政党・有権者の動向に関する調査を行う。そして、衆議院・参議院・韓国国会それぞれにおける時系列比較はもちろん、同じ日本における衆議院と参議院の比較、衆議院における選挙制度改革前後の比較、日韓比較など様々な比較を行うことで、選挙制度改革とマルチレベルの政治制度の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成29年1月から3月まで体調不良で、十分なエフォートを確保できず、学期末の2-3月に予定していた海外調査を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目に、1年目に予定していた海外調査を実施することで主に旅費として執行する。
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Research Products
(3 results)