2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03490
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
薬師寺 克行 東洋大学, 社会学部, 教授 (00611378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正也 成蹊大学, 法学部, 教授 (70550945)
王 雪萍 東洋大学, 社会学部, 准教授 (10439234)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 清和会 / 日本 / 政治 / 政界再編 / 派閥政治 / 安倍慎太郎 / 塩川正十郎 / 小泉純一郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1980年代末から1990年代前半の時期を対象に、政界再編の政治過程を自民党清和会の視点から描こうとするものである。具体的には、(1)政治改革への諸構想、(2)派閥政治の変容、という二つの分析視角を設定している。本研究は、研究代表者の薬師寺克行が朝日新聞社の勤務中に取材メモとして残された当時の関係者の肉声を手がかりに、55年体制末期から、清和会内部に存在した多様な意見や政治構想を整理し、これらが政界再編後にどのような影響を及ぼしたかを検証している。 2018年度では、取材メモのPDF作業を元に、データベース構築するために学生アルバイトを雇用し、テーマ別の資料のキーワード入力を年度末に完成し、以下の通り、分析を行っている。第一に、政治改革への構想については、政治改革に対する様々な構想をめぐる清和会内部の意見対立を解明した。伝統的に清和会は、高度に組織化され鉄の結束を誇った経世会と異なり、イデオロギー的にも多様であり、自由闊達な雰囲気を尊重するサロン的色彩を残していた。リクルート事件発覚後、従来型の派閥運営が徐々に困難になり、安倍が病に倒れるなかで、組織の維持を図ろうとする安倍晋太郎や三塚博に対して、長老の福田赳夫や、後に新党さきがけに連なる「ユートピア政治研究会」を発足させた武村正義などは政治改革に積極的な姿勢を示すようになった。第二に、派閥政治の変容については、選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変更されたことで促進されたとの通説と異なる。本研究では、制度変化のインパクトを全面的に否定するものではないが、既に1980年代末の段階で政治資金の集金能力について各派閥にも格差が存在しており、組織としての派閥の形骸化がかなり進行していた事実も無視できないと考え、1980年代末からの清和会内部の集金システムや派閥運営の実態を詳細に分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、代表者が朝日新聞政治部記者などとして政界を取材した1980年代末以降の取材記録を活用し、55年体制末期から今日に至る日本政治を多面的に検証、分析することが目的である。そのため膨大な取材メモや資料のデータベース化が不可欠だが、その量が当初予想の1.5倍であることが分かり、資料のPDF化作業と、その上で行ったデータベース検索のためのキーワード入力作業も予定より半年遅れ、2018年度末に完了したばかりである。そのため、入力したキーワードの最終確認とデータベースを利用した研究成果の公表・公刊などは、2019年度に延期せざるを得ない状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度では、まず検索システムの構築作業を担当している研究分担者(井上と王)が2018年度に完成した研究資料のキーワード入力作業に対する点検を行う。その作業は6月をめどに完成し、資料データベースを完全に完成させる。7月から研究資料のデータベースを利用する本格的な研究分析を行い、年度後半に日本国内外の学会や国際会議での研究成果についての発表及び研究雑誌などでの公刊を目指す。
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Causes of Carryover |
2018年度の研究費は65万円ほど残っていた。それは予定していたアルバイト謝金及び研究成果公表のための経費であった。本研究の主要資料である研究代表者の取材メモ資料データベース化作業は、2017年度末にPDF化作業が完成し、2018年度末に、検察用キーワードの入力作業がようやく終了したため、予定より半年ほど遅れていたデータベースの最終点検用のアルバイト経費はまだ使用しておらず、また本格的な研究成果の公表も2019年度に延期されたため、研究成果公表するための経費も残された。2019年度、データベースのキーワードの最終確認及び検索システムの完成作業を年度前半で終了させ、年度後半は資料分析と研究成果の公表を中心に進める予定であり、研究費の消化と研究進度の遅れを取り戻すことができると考えている。 (使用計画) :謝金・人件費:30万円、研究資料購入費:15万円、会議費・旅費:20万円
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Research Products
(42 results)