2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03506
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上子 秋生 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70378503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 遊 愛知大学, 地域政策学部, 教授 (20552839)
村山 皓 立命館大学, 政策科学部, 教授 (50230016)
村山 徹 愛知大学, 三遠南信地域連携研究センター, 研究助教 (80706862)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民主主義の規模 / 民主主義を測る尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本との比較の対象とするカンボジアについては、本年度7月から8月にかけ現地での調査を行った。その内容としては、同国におけるもっとも小さな地方公共団体であり、その議員を住民の選挙で選ぶ最少の民主主義の単位であるコミューンに焦点を当て、コンポンチャム及びカンダルの2つの州において、現地調査を行った。 また、民主主義を測るる尺度とともに、民主主義を実現するための政策主体の範囲を検討した。俎上に上る尺度としては、投票率のほか、民主的な判断をくだすための政策情報の多さを示すものとして、情報公開の程度や市民参加のための懇談会の開催回数、民主的な運営がなされていることを市民が感じた結果としての市民満足度などがあげられる。 また、行政の自由裁量を検討する前提として、行政の応答性の基礎となる政策の地域要因を、行政区画を超えた連携に注目してその実状を調査した。一つは、三河、遠州、南信州にまたがる三遠南信の広域連携について、観光、シルバー人材、医療政策を中心に、もう一つは、以前に首都機能移転の議論もあったいわゆる畿央の広域地域について、伊賀市、亀山市および三重県庁の広域的な政策展開をリサーチした。具体的には、平成28年度は,愛知県,静岡県,長野県の県境域である三遠南信地域を事例とし,地方政府や広域連携組織におけるヒアリングや基礎資料の入手に着手した。くわえて,広域自治体や基礎自治体における行政の自律的裁量の一端を理解するため,三重県庁と県内自治体関係者にヒアリング調査を実施した。三遠南信地域においては,周辺の関係アクターである一部事務組合や広域連合,公益法人などに対して,基礎自治体による政策実現に関連する取組に関して調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の通り、研究を進めており、3年間での研究に見合った進捗となっている。 比較対象とするカンボジアについては、平成29年度のカンボジアにおける地方選挙が当初よりの一つの調査の契機であり、それに向けての準備は目論見どおりに進捗している。 尺度に関しては市民満足度の研究を進めた。民主的運営がなされていることにより、市民ニーズに即したサービスが提供されており、そのことにより、市民満足度が高くなるという関係は必ずしも比例関係にないことを検証した。サービスの質が高いところでは満足度は上がりにくいなど、サービスの質と満足度は非線形の関係にあることを明らかにした。 一方、政策主体の範囲に関して、「自治体のシェアードサービスの効率性と民主性」(日本公共政策学会 関西支部 第51回例会、同志社大学、2017年2月)といった口頭発表を行った。この研究では、政策主体の範囲が多くなればなるほど、市民へのアカウンタビリティの強化は困難になり、民主主義の程度が低くなることを検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては、カンボジアで6月4日に行われる地方選挙後、当選したコミューン議員を対象とした調査を予定している。これは、カンボジアのコミューンが最も小さな単位の民主主義であるからである。ただし、調査時期については、現地の情報を検討した結果、与党の不振の予測もあり、緊張が予想以上である点を踏まえ、選挙の直後ではなく、2か月程度後の、夏休み時期に現地の情勢をにらみつつ実施することとしたい。 さらに民主主義の尺度としてどのようなものがあるかの検討をさらに推進するとともに、民主主義の規模との関連を検討する。また、平成28年度の研究実績を踏まえ,引き続き代表制と応答性の尺度の作成に努める。そして,基礎自治体の各種政策分野における協定締結実績について調べることで,行政の自律的裁量の一端を定量的に把握できるよう試みる。 一方、政策主体の範囲については、通常われわれが想定するのは、単独自治体であり、投票率という場合も単独自治体の投票率を想定する。しかしながら、現実には一部事務組合や広域連合など複数の自治体により政策を検討し、サービスを提供していることから、複数自治体による民主主義を検討しなければならない点にも留意して研究を推進する。
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Causes of Carryover |
旅費額等が当初見積額を下回ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、今年度におけるカンボジアでのアンケート調査費用等に充当し、その内容をより充実させることとしたい。
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