2019 Fiscal Year Annual Research Report
A research into Social Exclusion and Citizenship in the EU
Project/Area Number |
16K03509
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
細井 優子 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (60638633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EU / 社会的排除 / 社会的包摂 / シティズンシップ / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
EUでは、各加盟国により国籍を付与された者は、その国での正式なメンバーシップに加えて、EU市民権も付与されている。EU市民権は市民にEUレベルでの政治アクセスを保証している。そして、EU諸国では活発なシティズンシップ教育により能動的な市民の育成も促進されている。しかし、政治アクセスが法的地位としての市民権をもつものに平等に保障されているだけでは、民主政治に不可欠な社会的連帯をもたらすために十分ではないことは、近年の頻発するテロ事件や反EUあるいは右翼ポピュリズム勢力の躍進を見れば明らかである。そうした背景にあるのは、グローバル化やEU拡大にともなう経済格差と福祉国家の機能不全である。たとえば、ポーガムは雇用の悪化、労働者の不安定化、失業の増大から生じる貧困を「剥奪的貧」と定義している。この場合の貧困は、従来の低所得としての貧困問題ではなく、広い生活領域の正常な状態から排除された状態である。このタイプの貧困は今日のフランスやイギリスをはじめ西ヨーロッパで拡大しており、家族の支援や社会の連帯は脆弱化しており、失業の影響を緩和させる作用は極めて弱い。したがって、このタイプの貧困は社会から縁辺化されるため「排除」とみなされる。2016年のイギリスの国民投票でEU離脱を支持した層には、労働者階級の白人男性が多かったことが指摘される。まさに彼らは、市民としての法的地位は持ちながらも、産業の空洞化で雇用が脅かされ、社会的からの疎外感を感じているという「内在的排除」の状態にあることが明らかになった。
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