2017 Fiscal Year Research-status Report
経済主体の位置づけから見たケインズ・ハイエク・フリードマンの資本主義観の再考
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16K03576
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
廣瀬 弘毅 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (20286157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 裕介 中京大学, 経済学部, 准教授 (00611302)
江頭 進 小樽商科大学, 商学部, 副学長 (80292077)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 新しい古典派経済学 / ケインズ / ハイエク / フリードマン / 資本主義 / ヴィジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、この2年間に得られた資料等をもとに、研究者が各自で考えをまとめることに注力した。さらに、今年度は中間年度ではあるが、積極的に成果をアウトプットすることができたと考えている。江頭と廣瀬は、ハイエクや新しい古典が経済学の方法論的な問題にアプローチを行い、吉野はハイエクについての現代的な意義について検討を行った。 まず、江頭は現代経済学における「実験」の持つ方法論的な意味について、考察を加えた。例えば、江頭はハイエクの理論と生物学の今西錦司の理論との対比を行う研究成果も出した。また、現代経済学における「実験」の持つ科学的意味について明らかにする成果も出している。例えば「実験」や「シミュレーション」は、最近の経済学では多くの研究が開拓されている分野ではあるが、そのアプローチが方法論的にどのように根拠づけられるかについての考察が、まだ十分ではない。江頭はそのような現状に対して、一石を投じた。 吉野は、ハイエクのアプローチの現代的な意義について、真正面から取り上げた。ハイエクの議論は、1980年代以降の新自由主義の時代に、「一度忘れ去られた」ハイエクの理論を人々に再び思い起こされることになった。だが、その後、地に足の付いたハイエク理論の発展につながらなければ意味がない。そこで、吉野は21世紀の今のハイエク理論の意義について、検討を加えたのである。 廣瀬は、新しい古典派経済学の方法論的な特徴について、1970年代からのケインズ反革命の際に生じた、「ヴィジョンの転換」と「方法論の転換」のねじれについて、明らかにした。つまり、フリードマンによって引き起こされた「ヴィジョンの転換」と新しい古典派経済学による「方法論の転換」という2段階の反革命を明らかにすることで、リーマン・ショック以降の経済学の見直しが中途半端に終わってしまっている原因を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度から得られた資料等をもとに、研究者が各自で考えをまとめ、それらの成果を出すことが出来た。 まず、論文等の成果については、江頭は現代経済学における「実験」の持つ方法論的な意味についての論考と別の科学分野(生物学)との比較についての論考を出した。「実験」や「シミュレーション」など、最近の経済学では多くの研究が開拓されている分野でにおける方法論的な根拠づけが、行われたのであり、我々の研究の幅を広げた。他方、吉野はハイエクのアプローチの現代的な意義について、1980年代にリバイバルを果たしたハイエク理論のその後の展開の可能性についての論考を出した。こちらの業績は、我々の研究プログラムの厚みを増すことに成功した。廣瀬は、新しい古典派経済学の方法論的な特徴について、1970年代からのケインズ反革命の際に生じた、「ヴィジョンの転換」と「方法論の転換」のねじれについて、明らかにした。これにより、我々の研究プログラムの現代的な意義についての接続について一定の方向性を示すことが出来たと考えられる。 また、学会や研究会での報告についても、我々の考えているプログラムについて、他の分野の研究者との交流に資するものであった。2018年2月に行った研究会(学会のMLで広く告知)でも、新しい研究分野であるテキストマイニングについての紹介を龍谷大学教授の小峯氏に行ってもらうなど、我々の研究手法に関しても、検討を加えることが出来ている。 以上のことから、今年度の研究についておおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究期間の最終年度となる。【現在までの進捗状況】にも示したように、それぞれが担当する経済学の特徴についての再検討は、これまで順調だったと判断できる。ただ、最終的な目標である「代替的な/新しい古典派経済学とは異なる経済学体系」についての構想可能性については、それぞれの研究分野の有機的統合が必要である。具体的には、ケインズ、ハイエク、フリードマン、そして現代主流派経済学者らの「経済学の構造」について比較で来るような総括を行いたい。 次に、狭く学説史的な世界に閉じることなく、広く他の経済学の分野の知見との擦り合わせも必要だと考えている。そのためには、江頭が進めてきたような先端分野の研究プログラムや、廣瀬が行ってきた政策分野での議論の土台、吉野の行ってきた社会における自由主義の受容等について、広く他分野との交流も必要だと考えている。次年度でどこまで可能かどうかはともかく、今後の研究の発展のためにも、その方向性だけは確定したいと考えている。そのためにも、我々相互の研究打ち合わせを今年度以上に密に行うことはもちろんのこと、他の分野の研究者との交流も行う予定である。 また、成果の公表については、当初の計画時よりも予算が減額されていることもあるので、今回の研究期間で国際的な学会での報告や海外の研究者との交流は難しいものの、次年度内に我々自身で学会のセッションを組んで、「報告」を行う予定である。そこで、別の分野の研究者とも交流を深めていく。そして、その成果を文章の形で残すことの準備も進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究担当者の都合もあり、海外での文献調査が行われなかったため、旅費において少々の残額が生じた。 次年度は、今年度まで各自が行ってきた研究成果を、有機的にまとめていく必要があるため、これまでよりも多く「研究打ち合わせ」や、「研究会」を開催する必要があると考えている。また、我々の研究目的の一つである、他分野の研究者との交流についても、できる限り行いたい。そのため、学会出張等にかかる旅費が相当程度必要になるだろう。 それ以外にも、最終年度と言うことから、成果の公表にかかる費用(論文のチェックなど)についても、ある程度見込んでいる。
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Research Products
(8 results)