2017 Fiscal Year Research-status Report
中古住宅市場における不動産価格指数の測定手法に関する研究
Project/Area Number |
16K03596
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
唐渡 広志 富山大学, 経済学部, 教授 (00345555)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 中古住宅 / 建築年次 / 一般化加法モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,住宅価格擬似パネルデータを利用したヘドニック価格モデルを応用して,プールされた個票データによる分析に発展させ,住宅ヘドニック価格モデルに直結する一般化加法モデルを新しく提案した。住宅が経年によって変動する属性で構成されている場合,正確なヘドニック回帰モデルは住宅の建築年次(コーホート)に依存する属性価格と,すべての属性についての経年減価率を測定する必要があるが,すべての住宅品質の計測の困難さや,各属性の経年減価率の識別の難しさがあるため,現実的な価格指数測定のためには代替的な手法が必要である。そこで加法モデルとして定義された建築年次と経年に対する非線形関数(3次スプライン関数)を仮定した上で,よりバイアスの少ない価格指数を統計的に検定した。 分析の結果,ヘドニック価格モデルでは年齢効果と時間効果に加えて世代効果を含めることで統計的信頼性が高まることが示された。特に,建築年および建築後年数のスプライン関数は提案したどのモデルにおいても統計的にも有意であった。したがって,世代効果の除外は推定値にバイアスをもたらしている可能性が示された。また,世代効果を推定する場合,年齢効果の定式化にはいくつかの選択肢が存在することも確かめられた。さらに,三つの効果について価格指数を求めると,世代効果を含むモデルと比べて世代効果を除いたモデルの経年減価率と時間効果は高めになることがわかった。 製造時点における住宅品質の差異は取引時点における経年劣化の度合いではなく,相対的な製品の陳腐化を示す指標になっていると考えられる。ただし,本研究は住宅品質に関する情報を製造時点の年次で代理しているため,住宅の生産時点における生産要素や中間財の市場動向,住宅建設や居住に関わる制度の違いによる影響も反映されている可能性もある。より詳細な分析は次年度の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の研究(タイトル:「ヘドニック価格モデルにおける世代効果:北陸3県の住宅市場を対象に」)は「不動産政策研究」において書籍化(株式会社東洋経済新報社)される予定である。 本年度までに住宅需要サイドの分析に見通しがついたので,次年度よりビルダーズ・モデルによる価格評価の検討に入ることができる。資料収集,分析手法の確認はすでに行っており,結果の報告について準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度において,これまでの研究経緯を踏まえた上で,不動産の供給サイドから価格評価を行うためのモデルを提案する。ビルダーズ・モデルは不動産の最適な開発時点からさかのぼることで得られる開発費用利子を除去した地価インデックスを計測する手法であり,これまでの経年効果・世代効果推定の技法を利用した新しい提案を行う。 試験的な分析では,(a)経年減価率の初期値の設定によって,時間効果はかなり変動する。(b)古い物件ほど修繕やメンテナンスの費用をかけているため建築後年数だけでは過少定式化バイアスが生じやすい。(c)外挿している建設費用は竣工時点の費用を表していないので,世代効果にその影響が出ている可能性があるなどの問題点を年度中に解決する。
|
Causes of Carryover |
購入書籍,ソフトウェアの価格が予定よりも低かったため。
|