2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03600
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
田中 勝人 学習院大学, 経済学部, 教授 (40126595)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非定常過程 / パネルデータ / 単位根仮説 / 局所検出力 / 数値積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
非定常パネルデータの理論的分析の先駆的な論文である Levin and Lin (1992) の Discussion Paper を批判的に検討した。次に、このモデルにおける単位根問題を議論している Moon, Perron and Phillips (2007) やMoon and Perron (2008) の他、パネル単位根に関する多くの文献を精査した。その結果、単位根検定の局所検出力の計算を、別の方法で行う方が効率的で、統一的な議論ができることを見出した。 具体的には、自己回帰型パネルデータ・モデルの中で、分析対象とするのに適切なモデルを選択し、単位根検定問題を設定した。説明変数としては、トレンドを持たない場合やトレンドを持つ場合を考察した。その上で、各モデルにふさわしい検定統計量を使って、検出力の計算を実行した。その際、統計量のモーメント計算が必要となるので、数式処理のソフトとしてMathematica を有効利用した。また、検出力の包絡線についても導出して、各検定のよさを調べた。その結果、一般化最小2乗法による推定量に基づく検定は、効率性をもつことが示された。このことは、純粋な時系列モデルの場合とは異なるパネルデータの優位性である。 上記の研究を、自己回帰型のモデルだけでなく、移動平均型のモデル、および、状態空間型のモデルにも適用した。これらのモデルに対しては、スコアタイプの検定を考えて、自己回帰型と同様の説明変数を考察した。その上で、単位根検定の局所検出力を計算した。検定の効率性については、最も単純なモデルの場合に証明したが、それ以外については未解決である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)自己回帰型パネルデータ・モデルにおける局所極限検出力の計算を、関連する同時積率母関数を使って実行できたことは、この分野における貢献であると考える。この方法により、検出力の計算が、統一的かつ効率的に行えることになった。 2)移動平均型のパネルデータ・モデルに対しては、漸近分布の表現から、同時積率母関数を使わずに、モーメントを直接計算する方が効率的であることが見出され、数式処理のソフトで計算することができた。ただし、考察した検定の最適性については、単純な場合を除いて、未解決である。この点は、時系列モデルの場合についても同様であり、困難な問題であると認識している。 3】状態空間型のモデルについても、移動平均型モデルの場合と同様に進めることができた。ただし、検定の最適性については、未解決である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)移動平均型パネルデータ・モデルに対して、単位根に対するスコア検定の漸近的な性質を調べる。このモデルは、非定常的なデータを時系列方向に階差変換した場合に生まれるモデルであり、利用価値も高い。さまざまな説明変数(切片やトレンドに個別効果や共通効果を想定)が検定に与える影響を考察したい。さらに、上述の未解決問題にも取り組みたい。取り扱いが自己回帰型よりも難しい。実際、自己回帰型のように、単位根の推定量を求めることは容易でないので、別の検定方式が必要となる。しかし、Tanaka (1996) で得られたオリジナルな結果を使って、問題を解明したい。
2. モーメントの計算に関しては、自己回帰型の場合と同様にする方が効率的か、あるいは、別の方法がよいかを検討する。自己回帰型と異なり、上述のモデルにおいては、漸近分布の表現が高次のオーダーごとに得られるので、積率母関数を使わなくても、直接的にモーメントを求めやすい。むしろ、積率母関数の導出の方が困難と思われるので、この点に関して検討したい。
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Causes of Carryover |
当初は、海外の大学の研究者との共同研究や海外の学会での研究発表を予定していたが、大学の職務との関係で時間を取ることができなかった。このことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外の大学(アメリカ、オーストラリア)の研究者との共同研究や海外の学会での研究発表のための旅費などに充当する計画である。
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