2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03600
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
田中 勝人 学習院大学, 経済学部, 教授 (40126595)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パネルデータ / 非定常性 / 局所検出力 / common regressor / heterogeneous regressor / 漸近理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の主要目的は、研究遂行中の内容に関して、国内外の多くの学会、大学などで発表して、コメントをもらうとともに、研究上の意見交換を行うことであった。具体的には、ヨーロッパの European Meeting of Econometric Society での報告、米国のハーバード大学、ボストン大学でのセミナー講演、早稲田大学での国際シンポジウムでの発表、オーストラリアのシドニー工科大学、ニューサウスウェールズ大学での講演などで、研究内容を報告して、多くの有意義な研究上の交流、刺激を受けた。特に、現在の研究トピックである非定常パネルデータモデルに関連する漸近理論の構築では、容易であるとの理由から、モデルの単純化が要請される一方で、他方では、現実の状況を扱うには、仮定が単純すぎるとの批判が寄せられた。具体的には、モデルの誤差項が時系列方向にも、クロスセクション方向にも独立である点は、条件が厳しすぎるとの指摘があった。また、自己回帰の係数が、すべてのクロスセクションで同一という仮定が単純すぎるという指摘を受けた。単純化することにより、結果も明確になるという利点はあるものの、現実により近いモデルで議論するという必要性は当然のことであるので、今後の研究の展開では、この点を意識して進みたいと思う。このような仮定の単純化を除いては、研究内容について、多くの興味が寄せられたので、この内容をさらに深化するべく、研究を続行したい。なお、今年度に得られた研究成果をまとめた2編の論文を世界的な学術雑誌に投稿中であり、今は、その審査結果を待っている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非定常なパネルデータモデルにおける単位根問題について、多くの関連文献を精査して、残された課題を見つけ、どのような形で研究を進めるかについての方向性も定まったように思う。特に、パネル単位根検定の漸近的な検出力の導出は、単純な設定のもとではあるが、きれいな形で行うことができた。また、説明変数がクロスセクション間で共通な場合と、クロスセクション固有の説明変数の場合とでは、単位根検定にあたえる影響に違いがあることを明示的な形で示すことができた。この点は、従来の文献にはなかった事実であり、今年度の研究成果として、特筆すべき発見であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今までに得られた成果は、非定常なパネルデータモデルに仮定した条件が比較的単純なもとでの結果である。仮定を複雑にすれば、結果も複雑になるが、現実妥当性の観点からは、より現実的な仮定のもとで議論を進める必要があるので、この点に留意して研究を継続したい。また、今までの結果については、現在、世界的な学術雑誌に投稿中で、その結果待ちの状況であるので、その結果を見てから、さらに具体的な方向性を検討したい。
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Causes of Carryover |
計画していた海外の大学や研究機関における研究発表の中で、相手方の都合などで取りやめたことや、別の研究資金により実現したことなどで、使用額が当初の予定を下回ったことによる。次年度は、研究の最終年度でもあり、海外での発表、報告のための費用に充当したい。
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