2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03652
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 産業集積 / 災害・防災 / 事業所組織 / 製品パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に基礎研究として製品と事業所組織レベルの分析を行った。近年の産業集積・地域政策は製品レベルや事業所・本社など組織レベルで行われることが多くなっているが、既存研究では未解明な部分が多い。製品レベルの分析として、工業統計の製品レベルのデータを用いて、生産パターンや製品の組み合わせ、地域の違いを研究した。Bernard and Okubo (2016, NBER)として刊行した。事業所組織の分析では事業所の数、本社の分離に関して、どのような企業特性(生産性)や地理的側面(都心と地方)が影響しているのかを分析した。論文はTomiura and Okubo(2016, JWE)として掲載された。これらの分析により製品や組織における企業の異質性は顕著であり、地域間の異質性も顕著であることが分かった。第二に応用研究として、強靭で柔軟な産業集積を実証分析した。企業の防災対策や災害後の企業間連携や政府・金融機関の支援がどのように企業の復興を短縮できたかを東日本大震災を事例に実証研究した。地震での被害の程度、特に津波の被害は復興を遅らせた。しかし、企業の規模もさることながら、重要だったのが企業の防災対策(特にBCP)や企業間連携や地域金融の支援であり、復旧期間を有意に短縮し、売り上げの回復につながったことが分かった。企業の防災対策や事後の企業間ネットワークや地域の金融支援が強靭な産業集積形成の上で重要であることを示唆している。Cole et al. (2017, IJDRR)として刊行された。さらに近年の産業集積政策である「産業クラスター計画」を実証分析した。企業間取引が政策により活発化するのかを検証した。結果、政策により都心部との取引を増やし、また、地方銀行などの支援がさらにこれを促進することが分かった。成果はOkubo et al. (2016)として論文を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り分析や論文作成は進んでおり、また当初の予定通りデータ整備も順調に進んでいる。また論文も順調に刊行されており、査証付き学術誌にも多く採択され、刊行されている。国際共同研究も活発に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の研究計画通りに進め、今後も引き続き現時点でのペースで研究を着実に行っていく。
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Causes of Carryover |
当初、データの収集・整理および紙媒体のデータの電子化・入力のためRAを雇用するあるいは業者に発注することを予定していた。しかし、他の資金により賄うことができたため、今年度は出資しなかった。一方でスケジュールなどの都合で共同研究者の滞在費が想定よりも高く出資している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降、研究計画に沿って有効に利用し、研究にまい進する。
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