2016 Fiscal Year Research-status Report
社会的混乱による利子率のリスクプレミアム拡大が小国開放経済に与える影響とその対策
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16K03683
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
鈴木 智也 関西大学, 経済学部, 教授 (40411285)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 景気循環 / 利子率リスクプレミアム / 新興国 / 動学的一般均衡モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の計画内容は二つである。一つは、学会で報告済みのニュージーランド(以下、NZ)の景気循環に関する研究成果を論文にまとめ、年度前半で査読付き英文学術誌に投稿し、戻ってきた査読コメントに基づいて改訂することである。もう一つは、南アフリカ共和国(以下、南ア)の景気循環に関する分析を行い、査読付き英文学術誌に投稿することである。 第一の目標について。利子率のリスクプレミアムに着目した景気循環の特徴を、安全なNZと麻薬戦争で危険なメキシコとの間で比較した。メキシコを選んだのは先行研究があり、比較対象として適しているからである。発見したことは、利子率リスクプレミアムの変動が景気循環に与える影響はメキシコの方でより大きいというものである。この結果を論文にまとめ、専門業者による英文校閲を経た後、七月にSpringer社の Economic Change and Restructuring 誌へ投稿した。ただし、十月に戻ってきた査読コメントでは大幅な改訂を求められた。結果的に、サンプルからNZを消し、代わりにメキシコと同等な新興国を八か国選び、モデルも代えて推定をやり直すことになった。改訂論文を一月に再投稿したところ、掲載決定通知が三月に届いた。 第二の目標について。南アの景気循環の特徴を分析して判明した結果を、九月に日本経済学会で報告した。NZとの比較については、二月の Eastern Economic Association において報告予定だったが、上述の通り、NZをサンプルから消したため、報告内容は上記の学術誌に掲載のものとなった。南アは上記論文のサンプルに含まれるが、上記の論文とは視点を変えて、南アだけを取り出した詳しい論文を新たに執筆した。三月下旬に専門業者に英文校閲を依頼し、英文ジャーナルへは年度明けの四月七日に投稿した。厳密にいえば、計画より七日遅れである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、七日間ではあるが、予定の期間を過ぎてしまった。遅れの生じた大きな原因は、想定していなかった新たなテーマが浮かび上がってきて、研究内容が重層的になってきたことである。このテーマについては、その内容を現段階では明かせないが、上述の南アの論文に少し盛り込んである。このテーマは新興国に広く共通のものといえそうなため、南ア以外でも試験的に分析を始めている。これが南アの論文を計画通りの年度内に投稿できなかった理由である。回り道にはなるが、より良い研究のため、そうすることを選んだ。また、遅れの生じた小さな原因は、専門業者に支払う英文校閲の費用を節約したため、校閲により長い日数がかかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように本研究に関連する新たなテーマが浮上してきたので、南ア以外の国でも、その仮説を試してみる。この研究には、2017年度第一四半期を当てる予定である。 2017年度第二四半期以降、基本的に当初の計画案を踏襲する。今年度にやるべきことは二つある。一つは、上述の南アの論文について査読コメントが戻ってくるので、それに基づいて論文の改訂を行う。査読コメントがいつ届くかという時期的なものと、どれくらいの改訂を求められるかという内容的なものによるが、できれば2017年度第二四半期中に再投稿したい。 もう一つは、モデルの改良である。先の論文で用いたモデルには、政府部門が入っていない。そこで、2017年度には、南アの動学的一般均衡モデルに政府部門を入れる。政府部門を入れたモデルでは、幾つかのシナリオに基づいて、政策ルールを経済主体の直面する制約条件として定式化する。金融政策におけるインフレターゲットの有無や財政政策における国際資本移動への課税の有無の違いについて、モデルに基づいてシミュレーションすることが目的である。こちらの論文は2017年度内に査読付き英文学術誌への投稿を目指す。
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