2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03688
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
小塚 匡文 流通科学大学, 経済学部, 教授 (20403230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平賀 一希 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (40528923)
藤井 隆雄 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80547216)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地方創生 / 地域金融の効率性 / 設備投資 / 資金調達の制約 / 信用保証協会 / アベノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
平賀他(論文1)では、地域金融の寡占度の上昇が貸出市場に与える影響について、貸出金利に対する反応を見ることで検証を行っている。その結果、寡占度が高まると、規模の経済性や効率性の上昇により貸出金利が下がり、これは寡占による貸出金利引き上げ効果よりも大きいことが示されている。今後、地域の金融機関の合併・統合を進めることで、地域金融の効率化を進め、地域経済の活性化を促すことが望まれる。 平賀他(論文2)では、平均限界税率データを用いて1963年~2011年の税収弾性値を推定している。推定の結果、労働所得についても資本所得についても税収弾性値は1をやや上回る一方、社会保障税を含む労働所得では税収弾性値は1より低いことが明らかとなった。この違いが発生している要因として、それぞれに適用されている税制が異なっていることが考えられる。 小塚(論文3、著書1)では、資金調達の制約が中小企業の資金調達に及ぼす影響を考察するため、「中小企業実態基本調査」(平成18年度から平成25年度の実績値)のデータより検証した。その結果、平成20(2008)年度から実施された緊急保証制度やアベノミクスによる資金調達制約の緩和は一定程度あったが、負債比率が高い企業では、その制約がより強くなっていたことが示されている。一方、三大都市圏ダミーを用いた検証では、三大都市圏において負債残高が設備投資を抑制する傾向がより強くあったことを示唆している。今後は、各地域の特性を踏まえた異なる施策が実施されることが望まれる。 小塚(論文4)では、わが国の預金取扱金融機関の不良債権比率と預貸率の関係について、2004年から2012年について検証している。その結果、他の運用機会のある信用金庫では、符号条件と異なる正の相関が多くの地方で見られることが示された。 この他、社会資本整備と株価に関係についての研究も公刊予定である(論文5)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミクロデータを用いた検証については、本研究の目的意識に合致する企業のミクロデータ(省庁発行)を利用することができた。そこで、そのデータセットを用いた実証研究を進め、その成果はディスカッションペーパーとして発表した後に、加筆・修正の上、書籍の1章として公刊された。この他、全国の金融機関の預貸率と不良債権比率に関する研究ノート、地域金融市場の効率化と貸出行動に関する研究も進めた。これらは、現在の地方が置かれている状況を設備投資や金融市場の面から検証したものである。地方創生は「ローカル・アベノミクス」として、政府の重要課題とされており、地方創生のあり方についての知見となるこれらの研究は一定の意味があると思われる。 一方、租税弾性値の推定に関する研究でマクロデータを用いた分析を展開している。これは、税制のあり方にもかかわるモノであり、今後の日本の財政政策を考える上でも重要な知見をもたらすと考えられる。また、上記の「研究実績の概要」には記載していないが、株価に対して政府の社会資本整備が及ぼす影響を検証している。これも、アベノミクスで第2の矢とされる、財政支出に関する知見をもたらすものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度はミクロデータを用いた研究は中心となっている。これは、ミクロデータの入手時期と重なったことが要因である。ただし、ミクロデータを用いた検証はまだ残されている。まず、前年度に入手した静岡県の製造業に関するミクロデータについては、データ整理と分析方針が決定し、現在分析を進めている。この他、静岡県の金融機関の出店行動に関する研究については、推定作業は完了したが、現時点では論文の形で発表するには至っていない。こちらについても、現在執筆中である。 なお、当初の計画では、マクロデータを用いた分析を優先するとしていた。しかし前述のように、いくつかのミクロデータが利用できる状況になったため、当該年度はミクロデータによる検証を優先した。マクロデータを用いた検証については、現在、政府の社会資本整備に与える影響について、さらに多くの要素を考慮した研究を進めている。この他には、おもにVARモデルに基づくマクロ経済政策の効果も検証を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、平成28年度にデータセットを、平成29年度にその更新版を購入する予定であった。しかし、平成28年度に購入契約、平成29年度に支払いをしたデータセットが高額であったため、更新版もしくは最新版のデータの追加購入ができなかった。その結果、データセットに充てた合計額が当初の予定よりは少なくなり、余剰が生じている。
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Research Products
(15 results)