2016 Fiscal Year Research-status Report
先進国の金融政策正常化により新興国において発生するリスクに対するマクロ経済政策
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16K03741
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北野 重人 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00362260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際マクロ / 国際金融 / 国際資本移動 / 新興国 / 資本規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主に現在、懸念されている新興国からの資本流出問題に関する知見の集積に取り組んだ。米国の金利上昇が近い将来、予想される局面において、生じる可能性のある資本流出と為替レートの減価について、過去の新興国で生じた危機前以前の状況との比較を行い、過去の研究を踏まえて検討を行った。また、こうした検討に加えて、平成28年度の研究実績としては、以下の3つがある。 (1) 国内の銀行と海外の投資家にファイナンシャル・フリクションがある小国開放経済モデルを構築し、資本規制の厚生効果を分析した。分析の結果、前述のフリクションの程度が大きい場合ほど、資本規制の効果は大きく、より強い政策姿勢が望ましいことを明らかにした。 (2)アジア通貨危機以降、多くの新興市場国がドル・ ペッグを離れ、変動為替レート制の下で(広い意味での) インフレ・ターゲティングに移行した経験を踏まえ、ペッグ制、変動為替レート制の下でのマネタリー・ターゲテイング、そしてインフレ・ターゲティングの3つのレジームに関して、理論的に政策評価の分析を行った。分析により、インフレ・ターゲティングが最も望ましいレジームであることを示唆する結果が得られた。 (3)価格硬直性と金融フリクションを有する小国開放経済のDSGEモデルを用いて、新興国に焦点を当てカリブレーシヨンを行った上で、標準的なテイラー・タイプの利子率ルールの下で、対外債務の変動も併せて考慮する金融政策を分析した。金融部門が未発達な経済ほど、金融政策において対外債務の変化を考慮することが、より大きな厚生の改善につながる可能性があることを示唆する分析結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、主に現在、懸念されている新興国からの資本流出問題に関する知見の集積に取り組んだ。 また研究成果に関しても、今年度2つの研究成果が、海外学術雑誌において公刊されたのに加え、現在取り組んでいるプロジェクトに関する知見について、ディスカッションペーパーの形でまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度の研究により得られた資本流出と為替レートに関する知見を踏まえ、新興市場国の特徴を明示的に取り入れた確率的動学一般均衡モデルを構築する。新興国の資本移動に関する既存の研究により、投資環境の整備といった発展途上国内の経済状況の変化よりもむしろ、資本を送り出している先進国の利子率の変化が、発展途上国の資本移動における主な原因であったことが、明らかにされている。これより先進国の金利上昇が起これば、再び新興国は大きな影響を受けると予想される。その際、近年発展の著しい金融市場の不完全性・不完備性といった金融にフリクションがあるモデルを導入することで、これまでの研究よりも、新興国の金融市場の未発達な現状をより踏まえたモデルを構築することが可能と予想される。
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Causes of Carryover |
共同研究者との打ち合わせ費用やセミナーの開催費用について、所属する研究所内の経費によって、まかなうことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費の使用計画(直接経費)は、次の通りである。 物品費/100,000円、旅費/400,000円、人件費・謝金/90,000円、その他/64,510円 「次年度使用額」は、物品費、人件費・謝金、その他として、使用する予定である。
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