2016 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦期の労働力動員ー朝鮮人の炭鉱への徴用を中心にしてー
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16K03779
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三輪 宗弘 九州大学, 記録資料館, 教授 (30279129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 戦時動員 / 労務動員 / 強制労働 / 強制連行 / 朝鮮人労働者 / 賃金格差 / 炭鉱労働 / 民族間格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
国立公文書館では朝鮮総督府関係の戦時動員関係の資料を調査した。米国国立公文書館ではRG407 E#:368B: Foreign Occupied Areasの資料、例えば下記の様な資料を調査した。Box 2069 「南朝鮮産業労務力及賃金調査」(戦時中から昭和21年ごろまでの朝鮮半島の賃金統計。国会図書館憲政資料室にもマイクロフィッシュがある。請求記号 FOA 04945-04951)Box2071には「Military Government Activity 1945-11~1946-4」があり、その中に、朝鮮への入国(日本と北朝鮮)と出国の記録(引揚の統計データ)がある。その他マイクロフィルム「RG331 M1722 Roll8」の中に三菱高島鉱業所端島坑『華人労務者調査報告書』(昭和21年3月、国立国会図書館の憲政資料室 請求記号:IPS-1)をコピーした。 北海道大学大学文書館およびソウル大学校図書館では、炭鉱や鉱山(金属)の実習報告書を調査し、賃金や労働環境について記載のある個所をデジタルカメラで撮影した。 北海道博物館では、日曹天塩炭鉱、住友鴻之舞鉱山、北海道炭鉱汽船株式会社万字炭鉱の資料をデジタルカメラで撮影した。賃金や労務に関する契約やデータを中心に集めたが、膨大な量になった。北海道大学附属図書館では北海道炭鉱汽船㈱資料の資料を閲覧し、撮影や複写ができないため、労務関係や募集関係の資料をパソコンにその場で入力した。「労務23 釜山往復」には募集に関する統計や契約更新に関する記録があった。 ソウル大学校落星岱経済研究所、東亜大学校史学科、京都大学(「20世紀と日本」研究会)で戦時中の朝鮮人労働者が2年契約であり、賃金も日本人労働者と同じ基準の出来高払いであったことを話した。賃金の日本人と朝鮮人という民族間格差などなかったことをデータで示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道博物館が所蔵する天塩炭鉱、住友鴻之舞鉱山、北海道炭鉱汽船の膨大な量の資料に目を通し、その中から賃金、雇用契約、労働環境に関する資料をデジタルカメラで撮影することができた。米国国立公文書館や国立公文書館でも朝鮮人労働者や戦時動員に関する資料を蒐集することができた。炭鉱や金属鉱山などの実習報告書も北海道大学とソウル大学の二つの大学で目を通し、昭和14年から20年を中心に賃金や労働環境について調査することができた。報告も落星岱経済研究所(ソウル)、東亜大学校、京都大学で「二年契約と賃金」に関して、これまでの研究を報告することができた。落星岱経済研究所の李ウヨン研究員とは戦時中の朝鮮人労働者の賃金の民族間格差について情報を交換することができた。また同研究所の理事長で、ソウル大学経済学部李栄薫教授や東亜大学校史学部の李フンサン教授とも情報交換できた。とりわけ戦時動員に対してどのようなイメージが形成されているのかについて情報交換できた。両教授の下で学ぶ若い研究者とも意見を交わすこともでき、資料から何が言えるのかということをしっかり研究することが大切であることを理解できた。 朝鮮人労働者と日本人労働者は基本的に出来高払いであり、年齢や経験学歴が加味されたが、同じ基準であったことがはっきりした。賃金の統計データを今後も引き続きパソコンに取り込み、どのような基準で炭鉱労働者に賃金が支払われたのか明らかにしていきたい。貯金がどのように行われたのかについてもある程度わかるが、さらに今年度この点に留意して資料を読み込みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した資料の中から二年契約などの雇用契約に関する資料、賃金に関する統計データを中心に、学生アルバイトを使い、パソコンにデータを入力する作業を継続する。詳細に分析を加えたい。また実習報告書に関しては九州工業大学、京都大学、大阪大学などで賃金や労働環境に関する記述を中心に調べ、撮影したい。貯金額や送金状況や契約更新の条件などを明らかにしていきたい。 平成29年度は、ドイツの戦時労務動員について、ドイツに戦時動員された外国人労働者の賃金水準を明らかにしたい。そのため、ドイツ、フランス、イギリスで調査する。ドイツの戦時中の外国人労働者に関してはスラブ系やユダヤ人とフランス人やイギリス人との民族格差が指摘されているが、実態を明らかにしたい。また捕虜や義務労働(フランス人)の場合についても文献などからどの程度研究されているのか明らかにしたい。夏季休暇を利用して海外アーカイブで資料を閲覧し、大学の研究者と情報交換を積極的に行い、ドイツやイギリスにおける外国人労働者の待遇を明らかにして、日本へ移入した朝鮮人労働者の労働環境や待遇の国際比較を試みたい。
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Research Products
(7 results)