2017 Fiscal Year Research-status Report
企業データと従業員データを用いた日本企業の人事制度運用状況・四半世紀の計量的考察
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16K03862
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡嶋 裕子 大阪大学, 経営企画オフィス, 特任講師(常勤) (50761649)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人事制度 / 労働意欲 / 賃金 / 仕事内容 / 日本企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
「1)従業員データの整備,企業内制度施策情報を個別企業への聞き取り調査」については,制度施策についてのアンケート調査,共同研究機関との研究打合せ,従業員データとあわせたデータ整備などを継続して進めた。企業へのヒアリング調査についても継続実施し,制度施策の実施背景や業界事情や企業風土など,分析結果の解釈の際に参考となる質的情報を収集した。データ整備を進めながら複数企業のデータ分析に着手。組織レベルの制度施策や風土の影響を踏まえたマルチレベル分析に加え,他の分析手法での分析についても探索的に検討した。前年度学会報告を行った上司情報とマッチングさせた個別企業の従業員パネルデータを用いた分析については,専門雑誌への投稿用にパネルデータを3期分追加し再分析を行い,原稿を更新し論文投稿準備を進めた。 「2)回帰不連続設計(RDD)を用いた仕事の量・質の労働意欲・幸福感への影響分析」については,性・年代別のコーホート作成の予定を早め,先行的に基礎分析に着手した。プールした個別企業のデータにおいても,バブル崩壊後に賃金が落ち込み,徐々に回復に向かったところを2000年~2004年をピークに,賃金水準が落ちたままで推移しており,従業員の賃金や仕事への認識が冷え込んだままであること等を概観し,基礎分析において,自分と同じ仕事をする人の市場価格と自身の年収の相対認識が給与水準の満足度へ影響を与えることが確認できたので,さらに組織変数を加えた精緻な分析へと進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1については,複数企業のデータでの分析については想定していた精度での制度情報の入手ができず,仮説や分析方法について修正を行った。他方,研究課題2については,データ整備や基礎分析着手を予定を先行して行い,一次分析の結果をとりまとめ学会報告の準備を進めた。成果をまとめるにあたっては,当初の予定より進んでいる課題2についても英語論文作成・投稿を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
データ整備や基礎分析を終え,成果をまとめる段階に来ている。課題1について,制度施策情報の制約から分析対象組織が限定されたため,制度運用情報だけでなく外的環境変数も加え,分析手法や仮設の見直しとともに分析精度を上げ,学会発表や専門雑誌への投稿を行う。課題2については,先行的に行った相対年収や年収格差と労働者の意欲,満足度についての基礎分析の結果を受け,さらに仕事内容や労働環境についての産業や組織別の構造を踏まえた分析へと進める。また,課題2における“部下なし管理職”についての考察については,対照群としてのライン管理職データの入手が困難となり,分析の視点をライン/非ライン,部下の有無による比較から,年齢と仕事内容の変遷を踏まえたミドル人材の処遇および労働意欲についての考察へと変更する。
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