2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03958
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高橋 広行 同志社大学, 商学部, 准教授 (00580325)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域ブランディング / 美食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,食と農業を通じた地域ブランディングである。地域を活性化するためには,地域そのものの魅力を高める地域ブランディングが重要であり,特に,食文化を通じた地域ブランディング は可能であるという前提を置いて研究を進めてきた。これが成功している街は,第1次産業と第3次産業が地域の発展に寄与しており,かつ,地域を成立させる構造を有している,という仮説的視点を持ちながら,事例研究を進めるものである。 その具体的な成功事例として,近年,「美食」という地域資産を通じた地域ブランディングで多くの観光客を集めている,スペイン・バスク自治州にある「サン・セバスチャン」を取り上げ,その成功要因を解明してきた。 これまでの研究で明らかになった点は,サン・セバスチャンは,わずか人口約18万人の小さな街でしかないものの,豊かな自然環境に恵まれており,美食倶楽部という食を追求する地域住民とフランスのヌエバ・コッシーナという新しい料理文化を受け入れる土壌,その流れをひたすら追求する熱きシェフたちの存在と彼らの料理哲学からレシピまでを公開することによって,地域全体の美食のレベルを底上げしていったことで,地域全体に食意識の高い人々を呼び込む流れを作りだしている。この成功要因が成立するための構造を明らかにするために,第1次産業と第3次産業の関連性についてシェフと生産者にインタビューを実施し,構造を明らかにした。美食やシェフ・ニーズに対応することで農水産物の価値を高め,繁盛店へ貢献しているものの,その種を後世に残すといったスローフード化への対応が不十分であり,その点が今後の課題になるという点を指摘した。 そこで現在は,シェフが中心となり地域を美食の街へと変革してきた活動に対して,「行政や美食倶楽部,飲食組合などの組織が,どのように地域構造を支えてきたのか」といった点を明らかにすることを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この一年間は,これまでに収集した8件のインタビューデータを文字おこしし,そのデータの整合性をインタビュー時に確認した資料や,コーディネイター,同行者などに並行して確認を行ってきた。 これらの手順を踏まえ,修正を行いながら,データを整理していった。その後,論文としての構成を設計し,記述を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね,データ整理が終了し,論文としての構成も整ったので,原稿を作成している。おおむね問題なく,研究を完了させられると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,すでに現地でのインタビューや調査を通じて,必要なデータは収集していたが,インタビュー数と資料が多かったため,整理と分析に時間がかかっていた。そのために次年度に作業を繰り越すことになった。 今後の使用計画は,論文作成に向けた作業や追加の分析,資料購入等に関わる費用として使用させていただく予定である。
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