2017 Fiscal Year Research-status Report
コーポレートガバナンス・コード関連情報開示による情報効果と企業行動への影響分析
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16K03992
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中條 祐介 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (40244503)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 女性取締役 / 企業価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、取締役会の多様性と企業価値との関係について、特に、女性取締役の登用を中心に検証を進めた。検証に当たっては、デモグラフィー型のアプローチを採用した。その結果、女性の取締役登用は、企業価値に対して正の影響を及ぼすという結果が得られた。女性の取締役登用という政府方針が示される中、本研究の結果はその方針の妥当性に関する証拠を提示するものといえる。 しかし、女性取締役の登用と会計上の業績との間には有意な関係は認められなかった。それでは会計上の業績改善が見られないにもかかわらず、株価が上昇するのはいかなるメカニズムによるものなのか。本研究では、外国人株主の女性取締役登用に対するポジティブな評価によるもではないかと推測した。いずれにしても、女性取締役の登用により会計上の業績が改善し、それにより企業価値が上昇するというサイクルが確立されることが女性取締役の真の浸透に不可欠と考える。 本研究に関する課題としては、第1に、分析対象の拡張である。本研究で、東証1部、2部上場の企業の中で相対的に女性取締役の登用が進んでいる3業種(食品、医薬品、小売り)のみを分析対象とした。したがって、サンプル選択に関するバイアスの存在を否定できない。第2に、本研究では女性取締役の登用という外見上の要素によって分析をしている。女性の登用により取締役にどのような変化が起き、それが業績にどのようにつながるのかといった点を解明する必要がある。第3に検証モデルや代理変数ついても改善の余地がある。女性取締役の登用に関する代理変数の精緻化や別の企業価値を表す代理変数の採用も検討する必要がある。 以上のように、課題は残されているものの、女性取締役に関する就業経験等を含んだデータベースを整備することで、より精緻な研究結果が蓄積されていくと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、日本企業のコーポレートガバナンスに関する開示の包括的な実態調査と、その開示による情報効果及び企業行動への影響を分析することを目的としているが、今年度は女性取締役に関するデータベースの整備を進めることができた。ただし、女性取締役の業務経歴などに関する情報は開示されておらず、この点をいかに補強するかが課題であるため、「おおむね順調に進展」との評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる平成30年度は、引き続きのデータベースの整備と、コーポレート・ガバナンスに関する報告書への記載によりマネジメント体制に変化は起きるのか、起きるとすればそれが会計行動や財務業績に影響を及ぼすのかという点を明らかにしたい。 その際に、単なる相関関係の抽出にとどまることなく、因果関係を解明できるよう、研究方法を工夫していきたい。もしこれらの関係を検出することができれば、企業の会計政策研究に新たな分析視角を提供できると考えられる。 本研究課題を総括するものとして、研究期間を通じて得られた実証研究等の知見を踏まえ、コーポレートガバナンス関連情報の開示モデルの提示を予定している。
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Causes of Carryover |
第1の理由は、データベースに織り込む情報を試行錯誤した関係から、外注する仕様決定が遅れ、謝金の支出に至らなかったことがあげられる。第2の理由は、本務校での業務と学会、研究会の開催時期が重なるなど、旅費の支出が予定通り出来なかったことである。
次年度使用額については、今年度に計画したデータベースの作成ペースを上げるための謝金として支出するとともに、学会報告等の旅費に充当する計画である。
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