2019 Fiscal Year Research-status Report
女性会計士の増加・定着の阻害要因に関する日英比較事例研究:制度,組織,個人の視点
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16K04005
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松原 沙織 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (10514961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 貴宏 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (20649321)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 監査法人 / 女性会計士 / 働き方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,資料と聞き取り調査を駆使した探索的な調査を行い,日本の大手監査法人において女性会計士の増加・定着を阻害する要因を明らかにすることを目的としている. これまでの研究(2016年度から2018年度)は,日本の4大監査法人を対象とし,大手監査法人において女性会計士が男性会計士と同等に働いていくには,障害が多いことが明らかにされた.一方,日本の監査市場の特徴として,英国で見られるように大手監査法人が圧倒的な占有率を占めていない点が挙げられる.このことから準大手監査法人以外の監査法人での女性会計士働き方を見過ごすことができない. そこで,2019年度は,準大手監査法人で女性会計士が直面する問題を明らかにすることを目的とした.具体的には,丹念な聞き取り調査をベースとした定性的分析手法を用いることにより,社会規範や雇用慣行といった目に見えにくい部分を観察している.インタビューは,2018年度に行われた準大手監査法人で働く会計士への聞き取り調査(10名)に加えて,2019年度は10名の聞き取り調査を行った. 検討の結果,準大手監査法人の多くは,大手監査法人と同様に昇進しなければ働き続けることが難しくかつ複線という働き方が一般的に受け入れられていないことが明らかにされた.さらに時短制度で働く女性会計士を評価することが難しい風土が根付いている.この状況は,特にライフイベントを抱える女性会計士が働き続けることについて困難をもたらすと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
4年目は,準大手監査法人で働く女性会計士が直面する問題を明らかにすることを目的とした.当該研究は,昨年度および今年度に行われた準大手監査法人で働く会計士へのインタビュー調査をベースにに進めている.検討の結果,準大手監査法人での働き方は,特にライフイベントを抱える女性会計士が働き続けることについて困難をもたらすと考えられた. しかしながら,産休育休期間中(2017年度)の影響もあり,進捗度合いに影響が生じている.具体的には,準大手監査法人での働き方に関してはさらなる検討が必要とされている.したがって,最終年度を一年間延長した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで大手監査法人および準大手監査法人でパートナーとして働く会計士へ聞き取り調査を行ってきた.大手監査法人に関しては,大手監査法人でパートナーとして働く会計士30名にインタビューを行い,これをベースに検討した.具体的には,小野(2016)をベースに,長時間労働の本質を,長期安定的なクライアントとの関係性を基盤とした監査業務の特殊性や専門職であるがゆえに派生してくる雇用慣行と日本的雇用慣行の一部が相互に関連している点にあることを明らかにしている. 準大手監査法人に関しては,パートナーとして働く会計士20名にインタビューを行い,これをベースに女性会計士の働き方について検討した.考察の結果,準大手監査法人の多くは,大手監査法人と同様に昇進しなければ働き続けることが難しくかつ複線という働き方が一般的に受け入れられていないことが明らかにされた.さらに時短制度で働く女性会計士を評価することが難しい風土が根付いている.この状況は,特にライフイベントを抱える女性会計士が働き続けることについて困難をもたらすと考えられた. そこで,大手監査法人と準大手監査法の女性会計士の働き方に関する比較を可能にするため,準大手監査法人における女性会計士の働き方についてより一層深めていく必要がある.具体的には,これまでの準大手監査法人でパートナーとして働く会計士へのインタビュー(20名)をベースに,準大手監査法人での働き方にどのような形で社会規範や雇用慣行が埋め込まれているのかという点を,より一層深める形で検討していく.最終的に,これまでの大手監査法人および準大手監査法人に関する検討をベースに,日本における女性会計士の増加・定着の阻害要因を明らかにする.
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Causes of Carryover |
産休育休期間(2017年度)の影響があり次年度使用額が生じている. 残額は,研究を進めるための書籍等の購入に使用する予定である.
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