2016 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本社会におけるテレビによる時間意識の編成と多層性に関する研究
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16K04083
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
加藤 裕治 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (20633861)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会学 / メディア文化 / テレビ受容 / メディアの時間性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は戦後日本社会においてテレビを中心としたマスメディアが、人々の時間意識の編成に果たした役割を検証することを目的としている。研究計画において初年度(平成28年度)は主に資料収集とその内容精査、および聞き取り調査にあてるとしたが、計画どおり資料の収集に努めた。その結果、1950年代から60年代前半にかけてのテレビ視聴に関する当時の視聴時間調査や生活時間に関わる実証データ、またそこから分析された当時の各種報告論文などを網羅的に収集することができた。また1950年代に福島県本宮市の本宮小学校で行われたテレビ視聴に関するアンケートを元に、本宮市へ直接出向き、そのアンケートの実施背景や当時のテレビ事情などについて、現地にて当時の記憶が残る人々に聞き取り調査を実施した。 この結果をもとに、まずは計画書通り、本研究代表者が参加している研究会(文化社会学研究会)にて、「テレビがもたらす時間意識の再考ー「聴取者の時間」の視点から」のタイトルで報告を実施した(2016年9月24日実施)。またさらにの第89回日本社会学会大会(会場:九州大学伊都キャンパス、報告日:2016年10月8日)において「テレビがもたらす時間意識の再考 ――1950 年代の放送時間・番組編成の分析から」のタイトルで学会報告を実施した。 上記で記述したように平成28年度に行った資料収集では、網羅的に当時のテレビ視聴の実態を把握するデータの収集を実施することができた。またそれをどのようにまとめていくかについても、学会発表を通して整理することができた。またこれらの成果から逆に、今後より詳細に調査すべき対象(当時のテレビ番組の状況やその番組内容などのより詳細なデータ化、当時の地方のテレビ視聴状況の把握など)が明確になり、次年度につながる実績を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り、初年度の資料収集、当時の人々の生活時間調査やテレビ視聴時間についてのデータ収集は計画通り網羅的に収集することができた。また当時のテレビ編成の状況などについても基礎的なデータを収集することができた。さらに追加として、1950年代当時にテレビ視聴アンケート調査を実施した福島県の本宮市の小学校で当時の記録調査や、そのアンケートを実施した教員を知る人々などに聞き取り調査ができたため、この点は計画書以上のデータを収集することになった。ただし一方で、当時の視聴者らが視聴していたテレビの番組内容などについて、さらに踏み込んだ調査が必要だと考えている。 一方、こうしたデータをまとめていく方法や内容については、学会発表などを通して、一定の見通しを持つことができた。こうした理由から、調査全体の進捗については、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は計画書にある通り、本年度は前年度の資料収集や内容の精査をおこない、研究内容を一旦、中間的にまとめていくことを目標とする。また平成28年度の調査で判明した、不足する資料とデータを引き続き収集・補完することも同時に進める。この推進の内容は以下の通りである。 ○文献研究および資料収集の継続:前年度同様、資料調査を実施する。 ○聞き取り調査の実施:昨年度の調査結果をもとに放送関係者への聞き取り調査を実施し、これまでのデータ収集の内容分析の補完を実施する。 ○研究会での報告:前年度と同様に実施。具体的な事例研究の報告を実施することで、研究内容や進捗、またそれらの妥当性を第三者に評価してもらう。 また上記に記述したように研究内容の中間報告的なまとめを実施し、その成果を所属する静岡文化芸術大学の紀要に研究ノートあるいは紀要論文として報告できるよう研究を進める。
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Causes of Carryover |
研究計画では、放送関係者に聞き取り調査を実施することとなっていたが、実際の調査では、1950年代にテレビ視聴のアンケートに回答した視聴者(当時小学生など)らに聞き取りすることになり、謝金が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度実施できなかった、放送関係者への聞き取り調査を実施し、その謝金として支払いを行う予定である。
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