2017 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本社会におけるテレビによる時間意識の編成と多層性に関する研究
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16K04083
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
加藤 裕治 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (20633861)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会学 / メディア文化 / テレビの受容 / メディアの時間性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(平成28年度)は、主に1950年代後半の、子どもとテレビをめぐる当時の視聴時間調査や生活時間に関わる実証データを収集し、テレビを日常生活において受容していく子どもたちの生活変容の状況を把握した。こうした昨年度の調査をもとに、今年度の平成29年度はそれらをまとめ上げ、所属大学である静岡文化芸術大学の研究紀要(第18集)に「研究報告」として掲載した(編集:静岡文化芸術大学研究推進委員会、発行:静岡文化芸術大学、発行日:2018年3月31日)。なお、タイトルは「初期テレビ時代における子どもの視聴:1957年本宮小学校のアンケートから」である。 さらに今年度の研究では、上記で述べた1950年代の夕方や夜の時間だけでなく、1960年前後における早朝時間の番組編成について調査を実施した。実証データとして、当時のラジオ・テレビ欄のデータ収集とともに、ラジオ、テレビ批評の言説を収集した。それらのデータから、早朝テレビ番組の放送状況を確認するとともに、当時の人々の早朝番組への期待や不満などの意見について把握することを試みた。またそこから、早朝テレビ番組の時間帯に対する女性の不満や子供向け番組を批判する言説の存在が明らかになった。この点は、テレビと家庭(とその個々の成員)の関係のあり方を考察するための重要な視点であり、次年度以降より詳細に把握する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績にもあるように、昨年度までは研究計画に基づき研究報告を実施することもできた。今年度はラジオ・テレビ欄における早朝番組の変遷の確認とともに、「読売新聞」紙上で読者からのテレビ番組に対する意見を掲載した「放送塔」欄について、1950年代後半から1965年までの意見を網羅的に収集した。その結果、当時のテレビ番組や編成をめぐる人々の意識や視聴状況などのデータを得ることができた。また1963年には、こうした早朝番組の拡大に対してTBSから「テレビ早朝番組廃止」の意見が現れていることを、幾つかの資料で確認することができた。そうした資料が収集できた一方で、予定していた視聴者およびテレビ関係者の聞き取り調査について、先方の都合等で本年度の聞き取りができないなどの事態が生じた。そのため、実証データの収集がやや遅れている。これらの聞き取り調査や情報収集は次年度において迅速に進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では引き続き、早朝テレビをめぐる当時の言説を把握するためのデータ収集を継続する。また当時のテレビ視聴者やテレビ関係者への聞き取りなどを実施し、早朝番組が開始された当時のテレビの状況を把握することを目的とする。そして、そのデータに基づき、1960年代の前半を中心に、テレビによる「朝の時間」の編成について分析を進める予定である。特に1963年の「テレビ早朝番組廃止」では、テレビとラジオという放送産業をめぐる問題としてだけでなく、人々の朝の生活時間を乱すテレビの有害性という言説が現れている。こうした言説を分析することで、当時のテレビの時間編成に対する社会意識の所在などについて研究を進めていく予定である。またこの分析に関する報告等を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
主に聞き取り調査のための謝金が未使用であったため。この聞き取り調査は翌年度に実施する予定である。
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