2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Reconstruction Policy Using Social Capital in the Great East Japan Earthquake
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16K04093
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
遠藤 薫 学習院大学, 法学部, 教授 (70252054)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 社会ネットワーク / 地域史 / 漁業 / 養蚕業 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の復興政策において、それ以前の社会的ネットワークに十分な考慮がはらわれただろうか。効率性や迅速性が重視されるあまり、災害によって分断された社会ネットワークが、分断されたままに放置されたために、「復興」が叫ばれても、被災地には単に「箱物」が機械的にのせられただけで、真の意味での地域の再生までにはまだ道は遠いように観察される。しかも、日本社会は2010年代に入って、少子高齢化が加速し、多くの地域が限界集落化の危機に瀕している。住民の高齢化と減少は、地域を、社会ネットワークはおろか、生活さえ困難な場へと変えつつある。住民が少なくなるにつれ、居住地や農耕地への野生動物の侵入が顕著になっている。野生動物たちは農産物をあらし、地域の産業をさらに困難化している。一方、臨海部に目を移すと、東日本大震災後、漁獲量に大きな変化が現れている。このような状況を、前年度から考察している、近世~近代にかけての大きな社会変動の中に位置づけることにより、現状の困難さと今後に向けての新たな展望を模索することとなる。現在では、生産性の高い産業のない地域と見なされがちな、東北被災地一帯は、かつては、養蚕で栄え、日本全国を結ぶ流通のハブであり、鉱業などにより、日本近代化の礎を創った地域であった。そうした地域が、現在、衰退の傾向にあるということは、単に、日本社会の「選択と集中」の潮流によるというよりもっと深い問題が潜んでいるのではないか。近年、これまでのような、前近代-近代-後期近代といった歴史区分ではなく、「人新世」という地質学的区分によって、人間-動物-環境の歴史を捉えなおそうという気運が高まっている。東日本大震災からの復興という課題も、このような大きな視座から再検討する必要がある。
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