2016 Fiscal Year Research-status Report
地域社会での看取りはいかにして可能か―イタリアをフィールドとして
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16K04112
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
福島 智子 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (60435287)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 看取り / 在宅死 / 家族主義 / 高齢者介護 / 介護労働者 / 移民女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目前半は、平成25年、26年に実施したイタリアにおけるインタビュー調査の分析を踏まえ、イタリアの家族主義に関する社会学領域における議論を整理した。また、介護や看取りを家族が支えている現状に対する賛否それぞれの議論をまとめ、制度的な観点からの整理を行った。 イタリアにおける看取りに関するこれまでの研究を2本の論文にまとめた。イタリアでの高い在宅死率(約半数)は、在宅ケアを支える医療者や聖職者(教会関係者)のみでなく、高齢者を介護する介護労働者の存在なくしては実現しえないことが見えてきた。また、「施設での死」に対するスティグマ(否定的なイメージ)も強く、在宅死を望む本人や家族の価値観が強く関係しているという。それらの論文をまとめる過程で、今後の現地調査への示唆として、当初想定していた主なインタビュー対象者(医療者、聖職者、ボランティア)から、実質的に在宅での看取り(介護)を担当している介護労働者(移民女性)に焦点を合わせることとした。イタリアにおける移民女性の介護労働については、制度的な観点やジェンダー研究の観点から論じられている。渡伊前にこれらの議論を整理し、現地調査に臨む前に、アジア領域における介護労働者の研究等にも目を通し、具体的なインタビューの方法論について専門家の意見を伺った。 専門家のアドバイスを踏まえ、さらに先行研究レビューを通して、2年目の第1回目現地調査におけるインタビュー項目、目的等を精査した。インタビュー対象地域はローマ市内とし、対象者は数十名を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は1年目に第一回目となる現地調査(インタビュー調査)を予定していたが、インタビュー地域、対象者を選定していく過程で、調査方法を変更する方がよいと判断した。短期間で2回渡伊するよりも、長期間滞在し、調査対象者に1回以上のインタビューをする方が、より精度の高いデータを収集できると考え、第一回目の調査を当初の第2回目に統合することとした。 現地調査以外の研究計画については概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の計画は以下のように進める。7月下旬から9月中旬にかけて、第1回目の現地調査を行う。既存研究等のレビューから、今回の主なインタビュー対象者は介護を担う(主に移民)女性とする。言葉の問題やインタビュー対象者となる女性の仕事上の面から、調査の遂行は状況を見ながら判断する必要があり、長期間現地に滞在して、対象者との接触をなるべく増やすこととした。今回の現地調査を経て、インタビュー内容をまとめ、分析を随時進め、欠落しているデータ等を整理し、3年目の次回現地調査の詳細な計画を立てる。インタビュー分析は、ピアレビューを繰り返しながら論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
当初計画していた1年目の第1回現地調査の日程を、2年目に変更したため。変更の理由は、短期間の現地滞在を2回実施するよりも、長期間の現地滞在を1回実施した方が、より質の高いインタビューデータを得られると判断したため。当初、主なインタビュー対象者として想定していたのは、聖職者や医療者など、インタビューの交渉が比較的容易と考えられる人びとであったが、先行研究レビューを通じて主な対象者を介護労働者である移民女性としたため、インタビューの交渉も難航が予想され、長期滞在を選択した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年未使用分の渡航費用を、今年の渡航費用に追加する。滞在期間を増やしたため、当初の研究計画(2年目の支出)とほぼ同じ額になると予想される。
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