2018 Fiscal Year Research-status Report
地域社会での看取りはいかにして可能か―イタリアをフィールドとして
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16K04112
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
福島 智子 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (60435287)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 看取り / 高齢者介護 / ケア労働者 / 在宅死 / 移民女性 / ケア労働のグローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年8~9月、2018年2月に実施した現地調査の分析を進め、大阪での研究会にて論文の構想を報告、その結果を踏まえ、論文を2誌に投稿した。 調査では、地域社会での看取り(本研究では在宅での看取りを地域社会での看取りとした)を結果として支える移民女性による高齢者介護に焦点を当てた。2回の調査では23名のケア労働者を対象とした半構造化インタビューを行った。 超高齢社会であるイタリアの高齢者の多くは、人生の最期を自宅で過ごす。死にゆく過程に寄り添うのは、部外者でありつつ、ときに家族の一員とみなされる外国人ケア労働者である。場合によっては、長い介護期間にケア労働者と被介護者がいずれ訪れる死の準備を共に進め、被介護者が望む死を実現している。しかし、高齢者の死は突然であることが多く、その場合、死期が近いという自覚を前提とした準備をすることは難しい。被介護者の予期しない死に寄り添うことは、ケア労働者に大きな精神的負担を強いるものとなっていた。以上の結果は、ケア労働のグローバル化に伴い、介護の先にある看取りまでも移民女性が担う現状を明らかにした。本調査の対象者の多くは、臨終に寄り添い支援することを不当な―契約上の仕事以外の様々な仕事をさせられる―job creepとは捉えていない。むしろそれを仕事の一部ではなく、「家族の一員として」あるいは「人として」の義務であると感じている。 このような移民ケア労働者による看取りは、イタリア社会において理想とされる「愛する家族に寄り添われる死」を、本来の家族に代わって実現する面を持つ。したがって、部外者である移民女性の存在は、看取りの専門職による医療化と対抗し、 家族主義的価値観を補強する逆説的役割を果たすといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに実施した2回の現地調査の結果をまとめ、学会誌に投稿したが、想定以上に査読の時間がかかっている。査読の過程で得られた有益なコメントを踏まえて、2019年に再度、最終の調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画については、1年間の期間延長を申請し、受理された。2019年の前半に最後の現地調査を実施し、その結果を踏まえ、さらに論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
2017年夏、2018年2月に実施した現地調査の分析を進め、研究結果の一部を現在2誌に投稿しているが、想定以上に査読の時間がかかっている。研究をよりよいものとするべく、査読中に得られた様々な視点を新たに加え、最終の現地調査を実施するため、研究期間の延長を申請した。
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